JR西日本管内では2021年より山陽新幹線500系のフルカラーLEDを導入している。今回はこれについて見ていく。
1. 500系新幹線のフルカラーLED化改造で延命か
JR西日本では山陽新幹線を走る500系新幹線において、2021年11月より行先表示機をフルカラーLEDに順次置き換えを開始した。
そもそも500系新幹線は登場時から3色LEDを搭載していたため、方向幕と比べると保守点検が容易であった。もっとも40年程度の使用を想定している通勤電車であれば3色LEDからフルカラーLEDに置き換えるのは改修工事として当然なのだが、500系新幹線でも置き換えたということはあと10年程度は延命させる気満々なのである。
もっとも高速運転のため新幹線車両は寿命が短いとされる。日本では一般的な通勤電車が40年〜50年使用するのに対し、新幹線は寿命による置き換えは18〜20年程度が多い。ただ山陽新幹線では使用が進むにつれ新大阪~博多間の停車時間の長い「こだま」運用に就くことが多いことから、0系6両編成は22年間、100N系新幹線(「グランドひかり」型車両)は23年間使用している。また上越新幹線は200系新幹線を28年間同一編成で使用していた。
大半の車両が2000年に製造の700系8両編成(「ひかりレールスター」型車両)は既に車齢20年を迎えているが、比較的安定した技術で量産した車両であること、投入時から8両編成で大規模な改造を行っていないこと、投入当初から新大阪~博多間の折返しの多い運用にしかついていないので少なくともあと数年は使用できるだろう。
ただ1997年から投入している500系新幹線はもう24年も使用しているので十分車両寿命だし、投入当初は東京~博多間の「のぞみ」を中心に使用していたことを考えると台車も相当走りこんでいるのだ。さらに投入当初は様々な先進技術を多数盛り込み当時の国内最高速度の300km/hで運転していたほどなので長寿命には不向きな車両である。そう考えるともう寿命の500系新幹線には車両置き換え計画が本来あったと考える方が自然だ。
JR西日本は2021年にN700S16両編成を2本投入しているし、JR九州は西九州新幹線向けにN700S6両編成4本を投入するとしている。そう考えると西九州新幹線開業後の2023年以降(北陸新幹線W7系投入計画もあるので2024年以降の置き換えが濃厚)に車齢12年を迎えるN700系8両編成(「さくら」型車両)をN700S8両編成で置き換え、山陽九州新幹線の車両陳腐化の阻止を図れるほか車齢20年を超える500系新幹線及び800系新幹線を置き換える可能性は考えらえた。
ただこのご時世による旅客の大幅減少に伴いJR西日本では2020年に年間2,000億円もの赤字を計上しているため、安易に車両置き換えをできなくなってしまった。もっとも発注済みのものは多少遅れてでも納入するだろうが、それ以降の車両は各社とも発注を控えている。そうかんがえると車両新造費用を浮かせるために近年廃車予定だった500系新幹線を延命させることに方針転換した可能性が極めて高い。
2. では500系新幹線はいつ置き換えるのか
では500系新幹線はいつ置き換えるのだろうか。
少なくとも行先案内表示機をフルカラーLEDに置き換えたということは、向こう10年は使う気満々のようである。そうなると1997年から少なくとも2031年までは使用すると考えられ、同一新幹線車両で34年も使用するという歴代最長記録をたたき出すことになる。
山陽新幹線の今後の大きな動向を考えていこう。まず山陽新幹線では2037年までに兵庫県明石市内に新幹線車両基地を建設する計画がある。これはリニア中央新幹線の新大阪開業により山陽新幹線の利用増加が見込めるためで、車両増備が必要なことから新たに車両基地を建設することとなったものである。もっともこのご時世で規模縮小やリニア中央新幹線の工事延期で遅れる可能性はあるが、車両基地をつくるのは間違いなさそうだ。
その際、新大阪以西の列車メインの列車設定にも対応するため、増備する車両が16両編成なのか8両編成なのか、はたまた12両編成なのかは判然としていない。が、少なくとも車両投入のスケジュール上2年前の2035年以降は山陽新幹線増発用の車両新造に重きを置かなければならず、老朽車両の車両代替は難しい。
そうなると2035年までに山陽九州新幹線用直通車両を新車に置き換え、N700系8両編成を「こだま」運用中心に転用させる必要がある。そう考えると500系新幹線の引退は2035年~2036年ごろまでには行われるのではないだろうか。
もっとも500系新幹線もN700Sも「こだま」運用においては車両性能の差はあまりないため、500系新幹線を置き換えても「こだま」の所要時分に大きな変更はなさそうだ。
3. 結び
山陽新幹線では500系新幹線の方向幕表示機のフルカラーLEDへの更新に伴い、今後も使用し続ける可能性が高い。
今後JR西日本で山陽新幹線用の車両をどのように投入していくのか、見守ってゆきたい。
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