【週刊新幹線1号】新幹線のダイヤはどうできている?新幹線のダイヤについて考察する

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今週から始まる【週刊新幹線ダイヤ改正】!1号となる今回は、新幹線のダイヤはどのように組まれているのか、過去の時刻表から考察していく。

1. 新幹線のダイヤは定期列車の最速達から組むのが基本

そもそも、新幹線にはいくつの列車愛称があるかと思いますか?

2017年現在で「のぞみ」「ひかり」「こだま」「みずほ」「さくら」「つばめ」「はやぶさ」「はやて」「やまびこ」「なすの」「こまち」「つばさ」「とき」「たにがわ」「かがやき」「はくたか」「あさま」「つるぎ」の合計18種類。現在新幹線開業から約53年経過したが、始め18年弱は「ひかり」と「こだま」の2つしかなかったことから考えると、大幅に増えた。この中で2010年以降に設定された種別愛称が6つもあることから、ここまで増えたのはほんの最近なことだ。

新幹線は東海道、山陽、九州、東北、北海道、上越、北陸の7線なので、単純計算で概ね各線に3種類ずつの種別愛称があることになる。各新幹線で最速達種別、速達種別、各停種別に大別することが可能で、東海道新幹線の場合には最速達種別が「のぞみ」、速達種別が「ひかり」、各停種別が「こだま」となる。

新幹線のダイヤは、原則定期の最速達列車から組み始める。定期の最速達列車は停車駅の数が一定の場合、終日一定の所要時間で運行されている。2017年時点では「のぞみ」(山陽新幹線区間)、「はやぶさ」(東京~盛岡)などが当てはまる。

そして次に組まれるのは定期の速達列車。「さくら」「やまびこ」「はくたか」などが当てはまります。その次に臨時便の最速達列車、臨時便の速達列車、各停種別(「こだま」(山陽新幹線区間)「なすの」「つるぎ」など)の順に組まれていることが多い。そのため各停種別は、上位列車のダイヤに影響が出ないように何本でも待避を行う。10分停車・3本抜きが山陽新幹線で起こるのはそのためである。
ただし、列車密度の高い東海道新幹線はそういうわけにはいかない。1992年の「のぞみ」登場以降東海道新幹線も他新幹線と同様最速達列車優先でダイヤを組んできた。しかし2003年の「のぞみ」大増発時に「のぞみ」の本数が多すぎて「ひかり」「こだま」が合間を縫って走るようにするためには昼間の東京~新大阪間を2時間30分で組むのが不可能になることが発覚。しぶしぶ毎時7本(臨時含む)中毎時6本を2時間37分で運行せざるを得なくなりました。それから東海道新幹線は「のぞみ」「ひかり」が「こだま」と譲り合ってダイヤを形成しています。そのため最大5分待ち・2本抜きで運行している。

2. 定期・多頻度・僅少列車について

新幹線のダイヤは臨時列車なしでは語れません。当サイトでは便宜上、「定期」と「臨時」ではなく、「定期」「多頻度」「僅少」の3つに分けて扱う。

ケース1:パターンダイヤにおいて一定の分に対して発車する列車に用いる場合 2017年現在では主に7時台~20時台東京発下りおよび新大阪発上り東海道・山陽新幹線(「のぞみ」「ひかり」「こだま」)および10時台~16時台東京発の東北新幹線(東京~盛岡間)・上越新幹線 その他九州新幹線(2004年~2010年)では使用可能

  • 定期列車:ダイヤパターンにおいて範囲とする時間帯全て(運行時間が24時を回るために途中駅止まりになる場合などを除く)においてパターンダイヤ時間帯内で全便毎日運転となる列車。
  • 多頻度列車:ダイヤパターンにおいて範囲とする時間帯の中で毎日運転となる列車と臨時運転となる列車が混在する列車。須田寛氏は著書内の図にて定期列車と多頻度列車を区別なく使用している。
  • 僅少列車:定期列車:ダイヤパターンにおいて範囲とする時間帯ほぼ全てにおいてパターンダイヤ時間帯内で全便臨時運転となる列車。須田寛氏は著書にて季節・臨時列車と扱っている。

ケース2:列車ごとに見ていく場合(パターンダイヤが十分形成されていないための措置) 2017年現在では主に九州新幹線(山陽新幹線直通含む)・北陸新幹線で使用 その他東北・上越新幹線(1992年~2002年)ではやむをえずこちらを使用

  • 定期列車:毎日運行する列車。全ての新幹線に存在する。毎日運転の臨時列車(いわゆる航空業界における「定期チャーター便」もこのサイトではこれに含む)
  • 多頻度列車:年間60日以上運行する(であろう)列車。曜日運転列車も含まれ、毎週金・土・日曜日運転などの準定期列車的存在の列車も含まれる。
  • 僅少列車:年間60日未満しか運行しない(であろう)列車。春休み・夏休み・冬休み・GW・SWなどにしか運行されない、帰省ラッシュ用列車。

3. 過去の新幹線のダイヤ改正実施は?

新幹線は1964年の開業以来の53年間、運行本数の増加と車両性能向上に伴い幾度もダイヤ改正を実施してきた。

当鉄道ダイヤ研究会の調査では、過去に実施された新幹線ダイヤ改正は73回、うち1987年3月までの国鉄時代が23回、分割民営化されたJRになってからは50回となっている。一番多いのは古参の東海道新幹線の45回、次いで山陽新幹線の39回、東北新幹線29回、上越新幹線25回、北陸新幹線10回、九州新幹線8回、北海道新幹線1回となっている。まさに開業順とダイヤ改正の回数の上下関係が一致することがうかがい知れるだろう。ただ、この内訳には時刻表やWEBサイトでのダイヤ改正プレスが発出された回数のカウントであり、山陽新幹線を中心に特に国鉄時代にサイレントダイヤ改正を行っているようだ。そのためこの数よりも増える(そして東海道新幹線よりも実施回が増える)ことが予想される。

ダイヤ改正の傾向としては、1960年代・1970年代は東海道・山陽新幹線「ひかり」「こだま」の増発、1980年代は東北・上越新幹線の開業と東海道・山陽新幹線で「ひかり」の増発・速達化、1990年代は技術革新による新型車両導入による各新幹線の最高速度向上、2000年代は東海道・山陽新幹線「のぞみ」大増発を端に発する「のぞみ」の増発、2010年代は往年の名車両の相次ぐ引退と各停種別の速度向上、および新規開業が相次ぎ新種別ラッシュとなった。2020年代にはさらなるスピードアップとリニア開業が控えており、新幹線のダイヤ改正はますます深みのあるものになってゆくだろう。

4. なぜ新幹線のダイヤ改正を研究するのか

なぜ新幹線のダイヤ改正を研究するに至ったのか。それにはいくつか理由がある。

1つ目は東海道新幹線が1964年の開業以来53年以上もパターンダイヤを貫いていること。都市鉄道の場合、平日朝ラッシュ時、昼間、平日夕ラッシュ時、場合によっては土休日朝ラッシュ時、土休日夕ラッシュ時の5パターンを考えなくてはならない。しかし東海道新幹線の場合7時台~20時台出発まで概ね1つのパターンダイヤのみで構成されている。言ってみればパターンダイヤを非常に見やすいのだ。

2つ目はパターンダイヤの芸術性。東海道新幹線が53年間守ってきたパターンダイヤは、ダイヤ改正1つ1つごとに繊細な変化を見ることができる。1980年の「ひかり」「こだま」の運行比率が1:1から崩れ、1988年には現在の待避の基礎である2本抜きの開始、1993年の「のぞみ」のパターン化、2002年に復活した東北・上越新幹線のパターンダイヤ、現在のダイヤの基礎となった2008年の東海道新幹線のパターンダイヤ、そこからN700系投入に伴う3分単位のスピードアップ、2011年以降新規に開業した九州・北陸新幹線の亜パターンダイヤという新ジャンルの出現etc…数えきれない変化の蓄積が、各新幹線のダイヤ改正にある。それを1つ1つたどることで、新幹線開業以来の現在のダイヤがなぜできているのかを知るルーツを探ることができるのだ。

3つ目は国際比較が可能なこと。都市鉄道の場合、各々でダイヤが組まれていないことも多く(地下鉄アプリから引っ張ってきていますが、公式サイトで時刻表が出る都市鉄道があるのは日本と韓国くらい)、国際比較がしにくくなる。しかし高速鉄道は必ずダイヤが設定されているので、国際比較が容易なのだ。確かに各鉄道で制度の違いはあるものの、世界初の高速鉄道である新幹線を追いつけ追い越せで作られた世界各国の高速鉄道のダイヤも考察できるのだ。


5. 結び

新幹線のダイヤ改正について振り返る企画【週刊新幹線ダイヤ改正】。新幹線のダイヤ改正についてほぼ毎週考察してゆきますので、今後ともよろしくお願いいたします。

出典

東海道新幹線 写真・時刻表で見る新幹線の昨日・今日・明日, 須田寛 著, JTB出版事務局交通図書編集部, 2000年.

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