相模鉄道は2019年11月5日、プレスリリースにて2019年11月30日にダイヤ改正を実施すると公表した( 11月30日(土)相鉄線のダイヤ改正を実施 )。今回はこのうち横浜発着の列車について見ていく。
1. 全時間帯で白紙ダイヤ改正へ
今回の2019年11月30日相模鉄道ダイヤ改正では、相鉄JR直通線の開業に伴い全線で白紙ダイヤ改正を実施する。
今回のダイヤ改正はそうにゃんの相鉄線史上最大級だにゃん!という言葉に偽りがないほど、ほぼ全時間帯で変更を実施することとなった。もっとも2023年3月予定の相鉄新横浜線開業に伴う東急線との直通運転開始時にはもっと大規模なダイヤ改正になる可能性が高いのだが、少なくとも2019年までのうちで最大規模ということに偽りはないものと思われる。
なお、JR線区間は11月20日以降の公表としているのは、相鉄JR直通線の開業を反映したJTB時刻表及びJR時刻表2019年12月号の発売日が11月20日だからであろう。せめて渋谷発着時刻くらい載せてくれてもよかったのに…
そんなほぼ全時間帯で運転パターンが変わる白紙ダイヤ改正にも関わらず反応しない(できない)周囲への愚痴はブログに書き込んだとして、今回の相鉄のダイヤ改正のうち横浜発着列車について詳しく見ていこう。
なお今回の2019年11月30日ダイヤ改正では種別ごとに停車駅を大きく変更するが、これについて以前の予測記事に書いたのでそちらも参照されたい。
2. 平日朝ラッシュ時は運転本数据え置きも急行大減便へ
今回の2019年11月30日相模鉄道ダイヤ改正では、平日朝ラッシュ時の運転パターンが大きく変わり、白紙ダイヤ改正となっている。
平日朝ラッシュ時(横浜7時30分~8時30分到着)は、各駅停車は毎時11本から毎時9本に、急行は毎時11本から毎時8本に、特急は毎時4本から毎時1本にそれぞれ削減した一方で、今回のダイヤ改正より新規に設定する通勤特急が毎時3本、通勤急行を毎時4本設定することから、平日朝ピーク時は結果毎時26本のまま変わりない。
平日朝ラッシュ時のダイヤを見る限り、これまで急行と各駅停車を1:1で運転し、特急と急行を1:3で運転していたことから特急:急行:各駅停車が1:3:3になるように運転していたが、今回のダイヤ改正より西谷を通過する急行と西谷に停車する速達列車と各駅停車がそれぞれ1:1:1になるように組まれている。急行と各駅停車を1:1で運転しようというコンセプトに変わりはないのだが、この変更だけでも完全な白紙ダイヤ改正だ。
始発駅基準で見ていくと、ダイヤ改正前は本線の朝ラッシュ時は急行毎時11本と特急毎時4本の合計毎時15本であったが、今回のダイヤ改正よりJR直通特急毎時4本、横浜行き特急毎時1本、横浜行き急行毎時8本、横浜行き各駅停車毎時4本の合計毎時17本に一応増発するが、なんと平日朝ラッシュ時に本線海老名始発の各停横浜行きを運転するのだ。
各駅停車横浜行きは二俣川でいずみ野線湘南台から来る通勤特急横浜行きに乗り換えられるとはいえ(しかも二俣川→横浜では通勤特急より急行の方が停車駅が少ないので、純粋に遅くなるだけ)、瀬谷・三ツ境・希望が丘からはこれまで横浜に行くにあたり乗り換えが必要なかったところ、今回のダイヤ改正で急行のうち3分の1程度が各駅停車に置き換えられてしまったことにより無理やり乗り換えを強いるようになってしまっている。各駅停車が純粋に増えたのならまだ許せるが、急行を減らして設定したことに瀬谷・三ツ境は怒り心頭である。
なおいずみ野線は相鉄JR直通線と直通運転こそ行わないものの、平日朝ラッシュ時は各駅停車は毎時11本から毎時5本に大きく減らし、代わりに通勤急行毎時4本と通勤特急毎時3本を設定し合計毎時12本となった。
ただ、通勤特急はいずみ野線内でも通過運転を行うため、通勤特急が通過となる湘南台やいずみ野を除いて乗車チャンスが減少している。もっとも、新設した通勤急行が西谷→横浜間ノンストップ運転であること、通勤特急4本中3本がいずみ野で各駅停車に連絡しているので、ダイヤ改正前はたいてい二俣川で急行を待っていたのと比べればいずみ野線沿線から横浜への所要時間は短縮している。
なぜ本線各駅停車を設定してまでいずみ野線湘南台始発の直通列車を設定するのだろうか。ダイヤ改正前はいずみ野線は平日朝ラッシュ時は各駅停車のみの運転であり、湘南台から品川・東京方面に向かうには相鉄を使って横浜に出てからJR東海道線に乗るより横浜市営地下鉄ブルーラインで戸塚に出てJR東海道線に乗り継ぐ方が圧倒的に速いのだ。ちなみに品川8時29分着で検索すると、相鉄経由は二俣川で特急横浜行きに対面乗り換えしても湘南台7時30分発なのに対し、横浜市営地下鉄ブルーライン利用は湘南台7時43分発で済むのだ。これゆえ、湘南台駅の相鉄利用者数は横浜市営地下鉄の6割程度しかない(もっとも小田急の利用者が断トツで多いのだが)。
今回のダイヤ改正で相鉄JR直通線との直通運転が開始となり、本線二俣川~海老名間で運転本数が増加し運行経費が増え、かつ羽沢横浜国大~西谷間に加算運賃を設定したとはいえ横浜発着利用より相鉄JR直通線利用の方が相鉄にとって若干減収となってしまうことから、湘南台から相鉄JR直通線アクセスを向上させ渋谷・新宿方面への需要を新規開拓するとともに、横浜までの直通先着列車を設定することで品川・東京方面への利用者を横浜市営地下鉄ブルーライン経由から切り替えさせて増収を図る狙いがあるのではないだろうか。
ただ今回相鉄単独駅で唯一の勝組は鶴ヶ峰で、他社線と乗り換えられない駅として二俣川に次いで2番目に需要が大いにも関わらず平日朝ラッシュ時は各駅停車しか来ないが、今回のダイヤ改正より通勤特急や通勤急行が停車するようになり星川で抜かされない列車を設定することで大幅に時間短縮、鶴ヶ峰→横浜の所要時間は20~22分から11~14分に大きく時間短縮することとなった。
2.1. 朝オフピークは減便と特急大増発で10分間隔運転へ
また今回の2019年11月30日相模鉄道ダイヤ改正では、平日朝オフピーク時にも運転パターンが大きく変わり白紙ダイヤ改正を実施している。
まずは初電。かしわ台4時44分発各駅停車横浜行きからかしわ台4時42分発に2分繰り上がったほか、二俣川で連絡するいずみ野4時47分発各駅停車二俣川行きをいずみ野4時45分発に繰り上げた。
また今回のダイヤ改正では、急行の快速格下げを行う形で本線快速が大きく増えている。
海老名5時43分発特急新宿行きを設定するため、海老名5時40分発急行横浜行きを海老名5時35分発快速横浜行きに格下げし、西谷で接続することとした。運転時間の変更により海老名→大和間で運転間隔にバラつきが出てしまうため、大和5時52分発各駅停車横浜行きをかしわ台5時47分発に延長することとした。
また海老名6時01分発特急横浜行きを海老名6時04分発に繰り下げ、海老名6時03分発急行横浜行きを海老名5時58分発快速横浜行きに格下げした上で瀬谷で特急に抜かされることとなった。
平日朝横浜6時30分~7時30分着のオフピークは、特急を概ね10分間隔で運転し、横浜行きと新宿行きを半々で運転する。この時間帯、西谷で特急新宿行きに連絡するために急行から通勤急行に格下げした列車もあるほか、急行および海老名始発の通勤急行は全て瀬谷で特急に抜かれる。急行の減便分は各駅停車を運転するが、二俣川で湘南台始発の通勤急行に連絡で切ればまだいいが星川で急行に抜かれ後続の急行の方が早く着く列車まである。
オフピーク時間帯に特急を大増発することで所要時間を短縮し平日朝ラッシュピーク時の混雑緩和を図りたいのかもしれないが、それにしても相鉄単独駅の扱いがお粗末極まりない。
なお平日朝横浜6時30分~7時30分着のオフピークは、いずみ野線はダイヤ改正前同様全列車各駅停車での運転となっているが、毎時7本から毎時6本に減便してしまった。平日朝のピーク時だけ通勤特急や通勤急行を走らせて所要時間を短縮して利用客増加を見込もうとしているけど、オフピークに通勤急行などの速達列車を設定せず唯一設定していた各駅停車すら減便するようではまともに横浜市営地下鉄ブルーラインと競合できないのではないだろうか。
3. 昼間は特急大増発へ
今回の2019年11月30日相模鉄道ダイヤ改正では、昼間も運転パターンを変更している。
横浜口で見ていくと、本線特急毎時3本と本線急行毎時2本、本線快速毎時1本の合計毎時6本を10分間隔で運転し、その合間に各駅停車毎時6本(海老名発着毎時2本、いずみ野線湘南台発着毎時4本)を10分間隔で設置、その合間を縫うように毎時2本のいずみ野線湘南台発着の快速を30分間隔で運転する。
なお本線快速は西谷で相鉄JR直通線新宿発着の特急と連絡するほか、横浜発着の特急は二俣川で毎時2本運転の本線各駅停車か西谷で毎時1本運転の相鉄JR直通線普通列車に連絡する。
これを見るに、昼間に毎時1本のみ運転があったいずみ野線特急がなくなり、代わりに横浜発着の本線特急が毎時2本から毎時3本に増発、二俣川~海老名間だけで見れば特急が毎時2本から毎時4本に倍増してしまっているのである。これにより二俣川~海老名間では合計毎時8本から毎時10本に増発し、輸送力が25.0%も増加する。
まあ、特急が増発する分には特急は空いているだろうが急行の混雑が和らぐのでいいのかもしれないが、本線急行が毎時4本から毎時2本に減りうち毎時1本は2017年3月18日ダイヤ改正で昼間から消滅したはずの本線快速への格下げである。そう考えると二俣川以西の特急通過駅はまた不便になるようだ。
ちなみに横浜~二俣川間では毎時15本から毎時14本に削減し、輸送力は6.7%削減することとなった。主たる原因はいずみ野線特急の削減なので、輸送量からすれば大きな影響はなさそうだ。
昼間のダイヤを見ていると西武池袋線並みにカオスなおことになっているように見えるのは気のせいだろうか…
4. 平日夕ラッシュ時は急行大減便へ
今回の2019年11月30日相模鉄道ダイヤ改正では、平日夕ラッシュ時にも大きく見直しを実施する。
本線急行の発車間隔は7~13分間隔とバラつきがでるが、湘南台行き快速(二俣川で各駅停車大和行き改め海老名行きに連絡)と合わせて5~8分間隔で発車することで混雑を均等化しようとしている。
ただ、大和から先はこれまで急行毎時9本直通で行けたものが今回のダイヤ改正よりうち毎時3本が停車駅の多い快速利用かつ二俣川乗り換えになったほか、二俣川~大和の各駅はこれまで急行毎時9本並びに快速から二俣川乗り換え普通連絡毎時3本の合計毎時12本で向かうことができたが、今回のダイヤ改正より急行毎時3本がそのまま削減したため利用チャンスが減ってしまった。瀬谷・三ツ境は怒り心頭である。
予測記事では20分間隔で相鉄JR直通線を設定するため平日夕ラッシュ時の減便は難しいと考えていたが、平日夕ラッシュ時に運転する急行・快速・各駅停車の中で一番利用者が多い急行を毎時3本も減便するなんて心外だ。せめて各駅停車を全ていずみ野線湘南台行きにして、快速を海老名行きに振り替えて直通先着列車を減らさないように対策できなかったものだろうか。なんだか急行・快速・各駅停車の中で一番減らしてはいけない列車を減らしてしまっている気がする。
これにより昼夕輸送力比は71.4%から77.8%に変化し、平日夕ラッシュ時にやや混む結果となった。
4.1. 夜オフピークも急行大減便へ
また今回の2019年11月30日相模鉄道ダイヤ改正では、平日夜オフピーク時にも運転パターンが大きく変わり急行を大減便している。
横浜20時台発・21時台発は海老名行き急行毎時6本、海老名行き快速毎時2本、湘南台行き快速毎時2本、各駅停車毎時8本(大和行き毎時2本、海老名行き毎時2本)の合計毎時20本で運転していたが、今回のダイヤ改正より各駅停車を毎時6本に削減したにとどまらず、急行を毎時6本から毎時3本に半減させたのである。湘南台行き快速が二俣川で各駅停車海老名行きに連絡するとはいえ、横浜から大和・海老名方面の直通速達列車は毎時5本と、土休日の同時間帯の毎時6本(急行毎時3本・快速毎時3本)より少なくなってしまっている。直通速達列車が毎時6本を割るのはさすがにやりすぎではないか。
また横浜22時台発は海老名行き急行毎時6本と湘南台行き快速毎時2本、各駅停車が毎時6本(大和行きが毎時2本、湘南台行きが毎時4本)であったが、今回のダイヤ改正より海老名行き急行が毎時3本、海老名行き快速が毎時3本、湘南台行き各駅停車が毎時6本に再編することとなった。
さらに急行と各駅停車が1:1で10分間隔で発車する相鉄最後の楽園であった横浜23時台発は、急行のうち2本が快速に格下げすることとなった。
5. 土休日夕ラッシュ時は20分サイクルダイヤで運転へ
また今回の2019年11月30日相模鉄道ダイヤ改正では、土休日夕ラッシュ時に昼間と独自の運転パターンを設定する。
なお今回のダイヤ改正より土休日にも夕ラッシュ時ダイヤを設定することとなった。土休日昼間は先述したようにいずみ野線直通特急が毎時1本削減することに伴い横浜~二俣川間で毎時15本から毎時14本に削減したが、昼間からいずみ野線特急の運転を無くした土休日夕ラッシュ時は毎時14本から毎時15本に増発することとなり、輸送力が輸送力が7.1%増加することとなった。
土休日夕ラッシュ時は横浜発で海老名行き特急毎時3本、海老名行き急行毎時3本、湘南台行き快速毎時3本、各駅停車毎時6本(大和行き毎時3本、湘南台行き毎時3本)となっている。特急は西谷で新宿始発の普通海老名行きに連絡できることから、急行が特急に格上げした分二俣川で乗り換えないと特急通過駅に向かえないということにはなるが、新宿乗り入れ列車が設定されるため輸送量が減るはずの横浜~西谷間で増発すること、湘南台方面へ向かう速達列車が毎時2本から毎時3本に増えることを考えれば、メリットも大きいように思う。
ちなみに土休日朝ラッシュ時もほぼ土休日夕ラッシュ時の上下裏返し状態である。
これを見る限り、相鉄JR直通線と横浜発着の列車が接続する際には、原則西谷に停車する列車同士で行うようだ。つまり、横浜発着の快速と相鉄JR直通線特急、または横浜発着特急と相鉄JR直通線普通列車の連絡が多い。二俣川ではいけなかったのかとは思うが、結果西谷で連絡させることを優先したために西谷を通過する急行から快速への格下げが行われている。ただ平日朝ラッシュ時は星川に停車する快速では、各駅停車から連絡を受けてしまい混雑が激しくなってしまうことから、快速停車駅から星川だけを抜いた通勤急行を新設して対応したようだ。
またダイヤを細かく見ていくと、相鉄JR直通線列車を利用して横浜方面へ向かう連絡は1分差でできないこともラッシュ時を中心に多くあるが、相鉄JR直通線方面への接続は比較的良好となっている。
この20分サイクルダイヤで運転する土休日夕ラッシュ時ダイヤを昼間にできなかったのは、相鉄JR直通線が夜間は毎時3本設定するのに昼間は毎時2本しか運転してくれないためである。つまりJR東日本によって相鉄のダイヤが破壊されたと言っても過言ではないだろう。
これでは失楽園ではないか。相鉄よ、急行と各駅停車とときどき快速がいるくらいの時代に戻ってくれ。
6. 結び
今回の2019年11月30日相模鉄道ダイヤ改正では、相鉄JR直通線運転開始に合わせ横浜発着列車でも終日に渡り運転パターンを大きく変える白紙ダイヤ改正を実施する。
ただ、内容を見てみると極度の小田急や横浜市営地下鉄ブルーラインへの対抗心に満ちた内容となっており、直接競合しない相鉄線単独駅の沿線住民を置いてけぼりにしてしまっている。
今後2023年3月には東急新横浜線との直通運転を開始しようとしている中、相鉄がどのようなダイヤ改正を実施するのか、見守ってゆきたい。
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