相模鉄道は2019年9月6日、プレスリリースにて2019年11月30日にダイヤ改正を実施すると公表した( 相鉄・JR直通線開業 11月30日(土)ダイヤ改正について )。また相模鉄道は2019年11月5日、プレスリリースにて2019年11月30日にダイヤ改正を実施すると公表した( 11月30日(土)相鉄線のダイヤ改正を実施 )。今回はこのうち相鉄JR直通線について見ていく。
1. 直通運転開始で新系統運転開始へ
今回の2019年11月30日相模鉄道ダイヤ改正では、相鉄JR直通線を開業する。
相鉄JR直通線は新宿~武蔵小杉~羽沢横浜国大~西谷~海老名間を運転し、車両はJR東日本E233系7000番台と相模鉄道12000系の10両編成を使用する。
ではどのようなダイヤで運転するのか、相模鉄道がWEB上で公表している時刻表から見ていこう。
まずは運転系統について。朝除いて相鉄JR直通線は新宿~海老名間で運転し、JR東日本側で車両を共用する埼京線大宮方面への直通は朝に限られる。これは平日朝は新宿発着の埼京線の折返しが多く相鉄JR直通線の新宿折返しを行う余裕がなく新宿以北の埼京線に直通運転を行うことになっている。また運用本数上相鉄12000系も新宿以北の埼京線区間に乗り入れる。相鉄12000系は埼京線新保安システムATACSを搭載しているが、朝に仕方なく直通運転を行うために導入したようだ。
しかし朝以外は新宿で全便折り返している。これまでの湘南新宿ラインや上野東京ラインでは直通化により車両運用本数を削減してきたのに、なぜここにきて新宿折返しの埼京線と直通運転することなく新宿折返しにしたのだろう。
おそらく今回の相鉄JR直通線の開業では、相模鉄道の神奈川県の沿線住民を捨てて東京に進出したいという思いが強くあり、新宿発着にしないと小田急から旅客が奪えないと判断したのではないだろうか。打倒小田急であればJR東日本にも新宿発着で設定する理由にはなる。平日朝ラッシュ時は相鉄沿線から新宿方面に向かう旅客が多いので新宿発着で設定する必要はないが(むしろ直通する方が池袋にも1本で向かうことができ、利便性が上がる)、昼間や平日夕ラッシュ時は新宿始発で並べば座れるようにすることで、小田急から客を少しでも奪いたいと考えたのだろう。
ちなみに女性専用車は平日朝のみ相鉄海老名→JR大崎間で設定する。新宿まで設定しないのは、大崎からはりんかい線新木場から来る埼京線列車もあり、E233系7000番台での運転の場合見分けがつかないからではないだろうか。
次に運転本数について見ていく。終日運転本数は平日・土休日ともに46往復92往復となっている。平日朝ラッシュ時は最大毎時4本の運転で、相鉄線内は原則特急として運転する。昼間は平日・土休日とも毎時2本の運転で、特急が毎時1本と各駅停車が毎時1本で運転する。両者とも西谷で横浜発着の列車に連絡できる。また平日夕ラッシュ時は毎時3本の運転で、特急として運転する。
とはいえ、実際に利用するとどのようになるのか実感がわかない人もいると思うので、実際に8時30分に新宿や渋谷、品川、東京に到着する場合を考えていく。
1.1. 渋谷・新宿方面へ10分程度所要時間短縮へ
では渋谷・新宿に8時30分に到着する場合、相鉄JR直通線の開業で列車はどう変わるのか。
ダイヤ改正前は新宿に8時30分に到着しようとすると、二俣川7時25分発急行横浜行きを利用の上横浜でJR湘南新宿ラインに乗り換えるのが最速であったが(渋谷8時19分、新宿8時25分着)、横浜でJR東海道線に乗り換えてさらに品川でJR山手線に乗り換えてもあまり到着時刻が変わらない(渋谷8時23分、新宿8時30分着)。新宿ならまだしも、渋谷は湘南新宿ラインのホームが遠いので山手線利用でも実質到着時間が相殺されてしまい、運転本数も湘南新宿ラインは平日朝ラッシュ時でも毎時6本しか運転せず東海道線の毎時18本や山手線の毎時23本と比べるとはるかに少ないことから、ほぼ湘南新宿ラインの意義が薄くなってしまうのだ。
しかし今回2019年1月30日ダイヤ改正で相鉄JR直通線を運転開始することに伴い、乗り換えなしかつ所要時間短縮が期待できる。
新宿に8時30分に到着するためには二俣川を7時40分に出発する特急新宿方面大宮行きを利用すればよく、これまでより15分遅い電車の利用で到達できるようになる(渋谷は8時24分着)。またダイヤ改正前とほぼ同じ出発時刻の二俣川7時23分発特急新宿方面大宮行きを利用すると、渋谷に8時07分、新宿に8時12分に到着することができる。
なお渋谷駅埼京線・湘南新宿ライン・相鉄JR直通線ホームは2019年11月30日の開業当初は不便だが、2020年3月ダイヤ改正までに北側に350m移設し利便性が大きく向上する見込みだ。
確かに運賃が高いから利用者は少ないかもしれない。ましてや2023年3月に東急新横浜線の開業により東急線と相鉄線が直通運転することになれば必要ないと感じる人も出るかもしれない。しかし早く到着する選択肢を作るという点では相鉄JR直通線は有意義なものではないだろうか。
ちなみに、大和から新宿に8時30分に到着するためには、小田急江ノ島線利用であれば大和7時34分発急行新宿行き(相模大野から快速急行)の利用で8時26分に到着できるが、相鉄JR直通線の場合大和を7時32分に出発しても新宿には8時30分にしか到着できない。つまり料金ですら割高なのに所要時間の面でも小田急にかなわないのだ。大和始発でもないのに相鉄JR直通線を利用する理由はない。
また大和から渋谷に8時30分に着くにも大和7時34分発発急行新宿行き(相模大野から快速急行)の利用で下北沢連絡京王井の頭線利用で8時30分に到着できる。もし相鉄JR直通線であれば大和を7時32分に出発すれば渋谷に8時24分に到着できるので、運賃は割高ではあるが2020年3月にホームを移設した後であれば利用価値は見出せそうだ。
もちろん大和~新宿間で相鉄JR直通線に小田急が勝てるのは2018年3月17日ダイヤ改正で代々木上原~登戸間の複々線化が完了し平日朝ラッシュ時も快速急行を運転することができるようになったためで、この複々線化完成と平日朝ラッシュ時に所要時間短縮がなければ相鉄JR直通線といい勝負になっていただろう。
このほか新川崎から渋谷・新宿方面へは2010年3月13日の武蔵小杉ホーム設置による全湘南新宿ラインの停車化により有効本数が新川崎~武蔵小杉間で横須賀線利用を合わせ毎時4本の利用チャンスを確保していたが、西大井~渋谷・新宿方面は相変わらず毎時2本しか利用チャンスがなかった。それが今回の相鉄JR直通線開業により利用チャンスを昼間毎時4本、平日夕ラッシュ時毎時5本にまで拡大することとなった。
1.2. 品川・東京方面へも相鉄JR直通線利用の方が速いが、利便性は横浜連絡が有利
では品川・東京に8時30分に到着する場合、列車はどのように変わるのか。
これまで東京に8時30分に到着するには二俣川7時32分発特急横浜行きを利用の上横浜でJR東海道線に乗り換え東京に8時25分に到着するのが最速であったが、今回のダイヤ改正より二俣川7時40分発特急新宿方面大宮行き利用で、西大井でJR横須賀線に乗り換え東京に8時30分に着くのが最速となる。
そう考えると相鉄沿線から品川・東京方面に行くには新しく開業する相鉄JR直通線の方が便利ではないかと思う人もいるかもしれないが、そうでもない。今回のダイヤ改正より二俣川→横浜間先着列車は平日朝ラッシュ時毎時15本から毎時17本に拡大するほか、横浜→品川・東京間の東海道線は平日朝ラッシュ時毎時18本も運転しており、両線とも平均4分間隔以内で列車が来るためほぼ待たずに乗れる状態である。しかし相鉄JR直通線は毎時4本しか運転がなく、15分間隔でしか列車が来ない。そう考えると、相鉄JR直通線利用の方が二俣川~品川・東京方面の所要時間は5分程度短いが、乗車チャンスや待ち時間を考えると横浜連絡JR東海道線利用の方が早く到着することもしばしばある。また二俣川は特急が停車するため平日朝ラッシュ時も相鉄JR直通線を乗り換えなしで利用できるが、三ツ境や瀬谷、さがみ野などの特急通過駅は平日朝ラッシュ時は横浜行きの電車に乗ったうえで乗り換えなくてはならない。またJRでは横浜~品川間に特定運賃を敷いており、定期券利用も含めて横浜連絡の方が安いことなども考えると、相鉄沿線から品川・東京方面に行くには、既存の横浜連絡JR東海道線利用の方が利便性が高そうだ。
ただ、錦糸町・船橋・津田沼など総武線方面に抜ける利用者にとっては、西大井で同一ホーム乗り換えでき所要時間のかからない相鉄JR直通線利用もいいのかもしれない。
くれぐれも、平日朝ラッシュ時はホームに人があふれている武蔵小杉での乗り換えはやめてほしい。現状ではホームに人が多すぎて2023年のホーム拡張が決まっているほどで、カーブ上にホームがあり傾斜もついていることから転落の危険性まである。そんな危険を冒すほどなら西大井で乗り換えてほしいものだ(もっとも混雑均等化の観点でいえば大崎で山手線乗り換えがベストなのだが)。あと、開業最初の平日に横浜経由の定期券ですり抜けようとしても出場時に降りられず精算機にかけなくてはならないので、遅刻しても知らないよ。
あと余談だが、羽沢横浜国大から一番安い運賃で行ける駅は鶴見の168円である。直通列車が1本たりとも走っていないし、武蔵小杉と川崎で乗り換えなくてはならないが、西谷の177円を抜いて最安となってしまった。
2. 西谷始発羽沢横浜国大行きピストン列車運転へ
今回の2019年11月30日相模鉄道ダイヤ改正では、羽沢横浜国大開業に合わせ、西谷~羽沢横浜国大間でシャトル列車を運転する。
直通運転の開始と聞くと、従来の形であれば直通する列車と直通しない列車があって直通しない列車を利用しても乗り換えれば別の列車での利用でも同一経路で利用できるのが普通であるが、こと相鉄JR直通線に関しては西谷~武蔵小杉間を運転する列車が相鉄JR直通線しかない。しかもその経路上にある羽沢横浜国大は昼間は毎時2本しか電車が来ない。すぐ横にはJR貨物の駅があるが、機関車けん引の客車を運転するわけにもいかない。
そのため羽沢横浜国大の初電は新宿行きが6時05分発なのに対し海老名行きが7時37分発、終電は海老名行きが23時51分発なのに対し新宿行きが22時33分発となっており、方向によって時間の差が大きい。
このことから、相模鉄道では早朝・深夜に西谷~羽沢横浜国大間でシャトル列車を運転することとなった。
設定するのは羽沢横浜国大5時38分発~7時07分発の4本で、初電から3本は西谷行きとして運転するが最後の1本は海老名で折返し特急新宿方面川越行きとして運転するため、各駅停車海老名行きとして運転する。
また深夜には海老名22時32分発各駅停車羽沢横浜国大行きと西谷23時29分発羽沢横浜国大行きの2本を運転する。
これらの早朝・深夜便の設定により、幅広い時間帯で羽沢横浜国大を利用できるようにするようだ。
早朝・深夜にシャトル列車を設定し昼間は毎時2本(30分間隔)しか設定しないくらいなら、JR鹿島線・鹿島臨海鉄道鹿島サッカースタジアムのように会社境界として機能しつつも駅営業を原則行わない形にしても良かったのではないだろうか。
3. 結び
今回の2019年11月30日相模鉄道ダイヤ改正では、相鉄JR直通線運転開始に伴い到達時間が大きく短縮される。
今後相模鉄道でどのようなダイヤ改正を実施するのか、見守ってゆきたい。
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