東急電鉄は10月12日、プレスリリースにて新型車両6020系の投入により2018年3月にダイヤ改正を実施すると公表した( 大井町線急行列車の7両編成化と新型車両6020系の導入 )。今回はこのうち、東急大井町線急行の増結および新型車両、および平日朝ラッシュ時のダイヤ改正予測について見ていく。
1. 大井町線急行の7両編成化
東急電鉄のプレスリリースによると、大井町線急行運転開始以来8年間で利用者が22%伸びており、最新の混雑率は目黒線や東横線の170%を上回る172%にまで上昇したことから、混雑緩和のため2017年11月4日より順次大井町線急行用に使用している6000系電車を6両編成から7両編成に増結される。
急行7両編成化は2018年3月のダイヤ改正までに完了する模様だ。各駅停車は九品仏でのドアカットと踏切移設でやっとドアカットを解消した戸越公園のホーム延伸が不可能に近いことから、各駅停車については5両編成のまま据え置かれることとなった。大井町線急行7両化により溝の口(田園都市線とホーム共用により10両対応)、二子玉川(田園都市線とホーム共用により10両対応)、大岡山(目黒線が将来8両編成化に対応しており、ホームを共用)を除く自由が丘、旗の台、大井町の3駅でホーム延伸が行われることとなった。これにより単純計算で大井町線急行は輸送力が17%上がることとなった。
また、大井町線急行が7両に増結されることにより、土休日昼間に運行されている田園都市線長津田〜大井町線大井町間直通急行(毎時2本)も6両から7両に増結されることとなり、他の渋谷に乗り入れ10両編成で運行される毎時6本の急行や準急との輸送力の差が縮まり、混雑緩和が田園都市線区間でもなされることとなった。これにより田園都市線二子玉川〜長津田間の土休日昼間の急行・準急の輸送力も2%増加することとなった。
2. 新型車両導入で、平日朝ラッシュ時の急行大増発
今回の東急電鉄のプレスリリースでは、2018年3月にダイヤ改正を行うとも公表している。これによれば、平日朝ラッシュ時の大井町線の運転パターンを変更するとしている。
そこで今回カギを握っているのが、同じプレスリリース記載の大井町線急行用6020系車両である。2018年3月ダイヤ改正に向けて、7両編成2本を導入すると言うのだ。これにより現在大井町線急行用車両が6000系のみの6編成から2編成増えて8編成となり、平日の運用数も4運用から6運用に増やすことができる。また土休日は昼間に毎時2本が田園都市線長津田まで乗り入れる関係で5運用となっており、検査などで足りない時は8500系や9000系の5両編成代走もあったが、今回の大井町線急行増備により解消されそうだ。
そこで今回は2018年3月の東急大井町線ダイヤ改正について予測していく。現状平日朝ラッシュ時は12分サイクルの中に急行1本と緑の各駅停車3本が運行し、急行毎時5本、緑の各駅停車毎時15本となっている。緑の各駅停車は上り(大井町行き)の場合は急行の1本前の緑の各駅停車毎時5本は上野毛で抜かれ、2本前の緑の各駅停車毎時5本は旗の台で抜かれ、残る毎時5本は大井町まで急行に抜かされることなく先着する。つまり溝の口・二子玉川からの先着本数は、自由が丘・大岡山・旗の台へは毎時15本、大井町までは毎時10本と言うことになる。
今回の6020系新型車両の増備により4運用から6運用に増やせることから、単純計算で12分間隔の急行を8分間隔に増発させることができる。大井町線の輸送量が増えていることを考えると各駅停車の運行本数が大きく減るとは考えにくく、平日朝ラッシュ時の毎時15本は据え置かれるのではなかろうか。そこで平日朝ラッシュ時のダイヤを組むと、8分サイクルに急行1本、各駅停車2本を入れれば急行毎時7.5本、緑の各駅停車は毎時15本で据え置かれ、デジタルATCを使用すれば2分間隔発車は可能なため、可能性は高いのではないだろうか。
とはいえ、8分サイクルは中途半端で、7.5分サイクルではないのかと思う人もいるのではないだろうか。確かにその方がわかりやすいようにも思えるのであるが、田園都市線準急が平日朝ラッシュ時4分間隔で運行されることを考えると、2本に1本大井町線急行に接続できることとなる。逆に7.5分間隔では間隔が合わないというデメリットがある。目黒線が平日朝ラッシュ時急行と各駅停車を1対2で運行させる場合には8分サイクルとなっていることからも、大井町線も急行が8分サイクル化して、平日朝ラッシュ時の緑の各駅停車大井町行きは上野毛か旗の台のどちらかで急行を待避することになるのではないだろうか。
もし大井町線の平日朝ラッシュ時のダイヤが現状の12分サイクルダイヤから予測の8分サイクルダイヤになる場合、輸送力は21%増となり混雑率は172%から141%に落ちると見込まれるが、二子玉川riseなどの再開発の進捗による沿線需要の増加や田園都市線からの旅客流入の増加などにより、150%程度で落ち着くのではないだろうか。この輸送力21%増は大井町線急行運転開始時の2006年の17%増よりも多くなっている。
3. 新型車両は田園都市線から奪い取ったのか
大井町線急行7両化の話は2017年初頭には出ていたが、新型車両6020系については今回のプレスリリースで突然降ってわいてきた。
新型車両6020系は2018年春に導入予定ではあるが、2018年3月に平日朝ラッシュ時大井町線急行大増発に使われるのであればそれまでに導入しなければならない。車両としても先にプレスリリースで公表されていた田園都市線用2020系と同一としており、違いは10両編成か7両編成かということなのだろう。
田園都市線用新型車両2020系であるが、こちらは2017年初頭にプレスリリースで2018年春に3編成導入するとしたものの、導入予定を公表して以来動きがなく、車両の構体も見せていない。田園都市線2020系に関しては1975年より導入されている8500系の置き換え目的であり、2018年3月のダイヤ改正までに必要不可欠ということではない。つまり大井町線急行用6020系より後でも構わないのだ。これまでも池上線・東急多摩川線用7000系の導入予定数をプレスリリース無しに大幅に縮小し、日比谷線直通用1000系の転用で済ませたこともあることを踏まえると、今回新規に導入される大井町線急行用6020系は当初田園都市線用2020系として導入されるはずだった車両・予算を回す可能性が極めて高い。つまり、東急随一の混雑路線かつ40年以上使用している、地下鉄乗り入れ対応ではあるものの車内表示器ほぼ全車未設置につき東京の地下鉄を走る車両の中でで唯一の外国語完全非対応という世界の恥さらし車両である8500系を多く持つ田園都市線より先に、混雑率が田園都市線よりかは低く急行は高々10年ものの新しい車両が揃う大井町線の方が先に新車が導入されることとなったのである。
4. 結び
今回の2018年東急大井町線ダイヤ改正では、急行の増結と増備により輸送力が格段に向上し、平日朝ラッシュ時の大増発により緑の各駅停車の混雑が緩和されそうだ。また土休日の田園都市線乗り入れ急行も副次的に混雑が緩和されそうだ。田園都市線沿線の人口が2040年まで増加すると見込まれている中、そもそも田園都市線新玉川線区間の複々線化を図ったほうが抜本的対策になるのだと思うのだが、バイパス路線である大井町線の今後のダイヤはこれで落ち着くのか、見守って行きたい。
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