東急電鉄は10月12日、プレスリリースにて新型車両6020系の投入により2018年3月にダイヤ改正を実施すると公表した( 大井町線急行列車の7両編成化と新型車両6020系の導入 )。今回はこのうち、東急大井町線の各駅停車の増発のついてダイヤ改正予測を立てる。
大井町線急行増結および新型車両の導入、平日朝の大井町線急行増発についてはこちら!
1. 広がる各駅停車昼間毎時10本ネットワーク
今回のプレスリリースで示された2018年3月東急大井町線ダイヤ改正では、急行の増結および急行用新型車両6020系の導入による平日朝の増発のほかに、昼間の各駅停車の増発も示された。
現在大井町線は昼間は急行が毎時4本、各駅停車が緑と青合わせて毎時8本の運行され、平日は青の各駅停車、土休日は緑の各駅停車が旗の台で急行を待避する。ここから昼間に各駅停車を増発していくとどうなるのか、予測していく。
まずは運行本数について。大井町線は今でこそ各駅停車は緑・青合わせて昼間毎時8本であるが、2008年3月28日の急行運転開始までは昼間毎時10本の運行で、均等に6分間隔であった。各駅停車が減便したのは急行運転開始に伴い一部の旅客が急行に流れると思われたためで、同様のことが東京都内のそこそこ需要のある東急線に急行を新設する、まさに東京急行政策により2008年6月22日の目黒線日吉延伸に伴う急行大増発時にも行われている。
しかし東京メトロだけではなく東急電鉄でも近年東京23区内での昼間毎時10本化に努めており、東横線中目黒~日吉間や池上線、世田谷線では既に昼間の各駅停車毎時10本化が成されているほか(東横線は2001年3月28日東横特急運行開始に伴うダイヤ改正で毎時12本から減便)、東急多摩川線は2005年6月10日に7分30秒間隔から6分間隔に短縮したことで毎時10本化、東横線代官山駅に関しても2013年3月16日の東京メトロ副都心線との直通運転開始と日比谷線との直通運転終了により各駅停車の毎時10本化が成され、田園都市線は2014年6月22日ダイヤ改正で昼間に準急を毎時2本増発することにより23区内区間の渋谷~二子玉川間の各駅で毎時10本化を達成した。これにより残りは2000年代より急行運転を開始した大井町線と目黒線のみとなった。
とはいえ全列車各駅停車の池上線と世田谷線を除いて昼間の毎時10本化は設定するのにはそれなりのスジがい要る。東急電鉄の場合主に15分サイクルダイヤで組んでおり、東横線の場合本来各駅停車は自由が丘と菊名で急行や東横特急、ラッシュ時には通勤特急の待ち合わせをするが、それでは昼間も平日夕ラッシュ時も毎時8本の各駅停車しか確保できないため元住吉で東横特急(Fライナー)の通過待ちをする各駅停車が昼間毎時2本あるほか、田園都市線も東京23区内に当たる旧新玉川線区間(渋谷〜二子玉川間)の各駅に止まる列車を昼間毎時10本化しているが、昼間毎時8本から増発するにあたりこの区間のみ各駅に止まり、二子玉川から西側で急行運転を行う準急として設定し、昼間は準急が毎時2本分増発された代わりに各駅停車毎時2本を渋谷発着(運用上は東京メトロの乗務員が渋谷〜半蔵門間回送運転により東京メトロ半蔵門線半蔵門折り返し)にするなど、変則的な対応を取っている。15分サイクルダイヤと毎時10本は相性が悪いのだ。
これを大井町線の各駅停車増発に当てはめるとどうなるか。大井町線は溝の口を除き全駅東京23区内に駅があり、今回2018年3月ダイヤ改正で増発されるのも各駅停車と既にプレスリリースで公表されているので、田園都市線のような準急が走るということはないだろう。急行電車の待避ができるのは、旗の台と上野毛(上り・大井町方面のみ)で、旗の台は終日待避に使われているが、上野毛は平日朝ラッシュ時にしか用いられない。旗の台は大井町線の中でも大井町寄りであり、二子玉川〜溝の口間では急行と各駅停車が続行運転していることも珍しくない。となれば、緑の各駅停車を上りは抜かれない各駅停車の後続、下りは抜かれない各駅停車の前の列車に入れるのが良いのではないだろうか。
現状、平日は大井町〜溝の口間を急行は19分で運行しているが、土休日は田園都市線に直通することもあって下り(溝の口方面)で21分、下り(大井町方面)で23分かかっている。各駅停車が毎時10本化すれば、ひる準設定に伴う2014年6月22日の田園都市線ダイヤ改正のように急行の所要時間が1〜2分延びる可能性も高くなり、場合によって平日の急行が土休日並みに遅くなる可能性もあるのではないだろうか。この大井町線各駅停車の昼間毎時10本化により、急行の6両から7両への増結と合わせて平日朝とほぼ同等の21%増となり、急行運転開始時の28%増よりかは抑えられることとなったものの、大幅な輸送力増強となった。
2. 平日夕ラッシュ時の増発はあるのか
2018年3月のダイヤ改正で平日朝ラッシュ時も昼間も輸送力が21%伸びる見込みの東急大井町線であるが、平日夕ラッシュ時の増発については何も書かれていない。
現状平日夕ラッシュ時は急行が毎時4本と緑の各駅停車が毎時12本の合計毎時16本となっているが、もし急行の増結のみであるとするならば輸送力は4%しか上昇しないこととなり、急行運転開始時の29%増には遠く及ばないことになる。沿線の一つで大井町線で一番混雑する区間のある世田谷区は2017年10月に人口が90万人を突破し、2040年までに100万都市になるという勢いで需要がこれからも伸びそうだ。今後の輸送量増大を見込むのであれば、平日夕ラッシュ時も増結のみならず増発されるのではなかろうか。そこで、もし平日夕ラッシュ時にも東急大井町線が増発されればどうなるのか、予測していく。
大井町線は平日朝ラッシュ時は2017年11月時点で平日朝ラッシュ時は12分サイクルダイヤ、それ以外は15分サイクルダイヤとなっている。しかし他方に向けてみると、東横線はほぼ終日15分サイクルダイヤとなっているのに対し、田園都市線は平日朝は4分サイクルダイヤ、昼間は30分サイクルダイヤ、平日夕ラッシュ時は10分サイクルダイヤとバラバラで、目黒線も平日朝は8分サイクルダイヤ、昼間は15分サイクルダイヤ、平日夜は12分サイクルダイヤと約数を考えても統一性がない。となると、大井町線の平日夕ラッシュ時も15分サイクルダイヤに縛られる必要は必ずしもないということとなる。
では増発するとすればどこが増発されるのか。大井町線は田園都市線のバイパス路線として位置付けられており、大井町線を溝の口まで乗り通す人の大半が田園都市線に乗り継ぐと考えるならば、田園都市線とダイヤパターンを合わせれば乗り継ぎがスムーズになる。田園都市線の平日夕ラッシュ時は急行毎時6本と各駅停車毎時12本で、各駅停車の本数は大井町線と同一だ。つまり、(そもそも田園都市線の急行は乗車率150%ほどと他の私鉄と比べて極めて高く、昼夕輸送力比の観点からも平日夕ラッシュ時に毎時8本くらい必要なのであるがそれはさておき)急行の本数だけ田園都市線と合わせれば良いのではないだろうか。ともなれば、大井町線の急行も6020回の増備に合わせて毎時6本化すれば、15分サイクルダイヤの東横線とはやや相性は悪くなるが、大井町線から田園都市線への乗り継ぎがスムーズにいき、利便性が高まるのではないだろうか。世田谷区民向け増発となると昼間同様各駅停車の増発の方がいいのではないかとも思われるが、大井町線は短距離ゆえ急行も利用できる旅客がたまたま各駅停車が来るために利用することも少なくない。そのため、急行を増発することで各駅停車が相対的に空き、輸送力に余裕を持たせて人口増加に備えることができるわけだ。
平日夕ラッシュ時に大井町線急行を毎時4本から毎時6本に増発すると、急行の増結も加味して輸送力は21%増となり、平日朝ラッシュ時や昼間の輸送力増強分とほぼ同等の効果が得られる。昼夕輸送力比を考慮しても平日朝および昼間のみ増発した場合は88%となり平日夕ラッシュ時が混雑していることがわかるが、平日夕ラッシュ時も増発がなされれば76%となり現状の76%同様推奨値内に入る。平日朝ラッシュ時の場合は旗の台または上野毛での各駅停車の待避が必須となるので溝の口・二子玉川→大井町の先着本数が毎時10本から毎時7.5本に減ってしまう見込みだが、平日夕ラッシュ時の場合は必ずしも全便が旗の台で待避を受けるわけではないので、大井町〜二子玉川・溝の口間の先着本数は毎時12本のまま保たれることとなりそうだ。
3. 結び
今回2018年3月東急大井町線ダイヤ改正では、急行の増便のみならず昼間の各駅停車の増便も盛り込まれている。平日夕ラッシュ時に増便がなさられるかは不透明であるが、今後も沿線人口が伸びることからいずれ増結や増発がなされることは間違いなさそうだ。今後のダイヤ改正に期待したい。
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