JR東日本は2019年12月13日、プレスリリースにて2020年3月14日にダイヤ改正を行うと公表した( 2020年3月ダイヤ改正について )。今回はこのうち東北・上越・北海道新幹線について見ていく。
1. 東北新幹線で「はやぶさ」定期化へ
今回の2020年3月14日東北新幹線ダイヤ改正では、東北新幹線「はやぶさ」の定期列車の増発を行う。
今回増発するのは東京~新青森間の3往復と仙台→新青森間の1本である。
それでは列車ごとにどのように定期「はやぶさ」を設定しているのか見ていく。
1.1. 早朝の増発で仙台へ所要時間短縮へ
東京7時00分発「はやぶさ3号」新青森行きは、東京7時00分発「はやぶさ383号」新青森行きの時刻を盛岡まで踏襲している。ただ、「はやぶさ383号」では停車していた八戸を通過することになるため、新青森到着が10時19分から10時15分に4分繰り上がる。
東京6時台発の「やまびこ」がなぜか2本連続で福島まで各駅に停まり仙台に行くには難を要するので東京7時00分発に定期「はやぶさ」を設定して東京から仙台まで速達で行けるようにするのはメリットが大きい。ただこの東京7時00分発「はやぶさ383号」新青森行きは前回の2019年3月16日ダイヤ改正で東京7時04分発「はやて351号」新青森行きを格上げしたものである。「はやて」から「はやぶさ」への格上げや臨時「はやぶさ」の定期化は良いのだが、格上げから定期化までの時間が短すぎやしないかとは思う。
ちなみに、東京7時00分発には平日運転の「なすの251号」那須塩原行きがあるのだが、東京6時56分発に繰り上げる可能性がある。東京6時56分発には「はやぶさ47号」新函館北斗行きを運転しているが、多客期を中心に運転しており平日運転がないことから、「なすの251号」と被ることはないだろう。
1.2. 停車駅が少ないのに鈍足列車へ
次に増発したのは東京14時28分「はやぶさ29号」。この列車は東京14時28分発臨時「はやぶさ311号」盛岡行きを新青森まで定期化したものだが(というかよく東北新幹線を走る列車に311号なんてつけられるなこの会社、山陽新幹線も定期「のぞみ117号」があるけど…)、行き先を延長するにあたり古川、一ノ関、北上を通過としたために盛岡到着が17時05分から16時53分に12分繰り上がった。
ただ直前を走る東京14時20分発「はやぶさ27号」新青森行きは八戸に停車して新青森に17時29分に到着するのに、後続の今回のダイヤ改正で定期化した八戸通過の東京14時28分発「はやぶさ29号」新函館北斗行きは新青森に17時41分に到着することから、定期列車なのに停車駅が1つ少ない方が所要時間が4分短くなってしまっている。新青森までなら既に定期列車として運転している東京14時20分発「はやぶさ27号」新青森行きに乗ればこれまでと同じ所要時間で移動できるので平均所要時間は伸びたとしても純粋に増発と捉えればいい話ではあるが、今回のダイヤ改正で東京14時20分発の「はやぶさ」は新函館北斗行きから新青森行きに短縮し、今回定期化した東京14時28分発「はやぶさ29号」が新函館北斗行きに延長することとなった。つまり、新函館北斗にへ行くには停車駅が1つ減ったにもかかわらず所要時間が4分延びる列車を使わざるを得なくなるのだ。
臨時列車だから定期列車の合間を縫って運転するために所要時間が延びるのは分かるが、定期列車に格上げした時に補正しようとは思わないのだろうか。仙台以北で各駅に停まる「はやぶさ」ならまだしも、最速達「はやぶさ」まで他の列車をどかせずに遅くなると考えるとあまりにもダイヤの作り方が雑すぎる。たとえ盛岡~新青森間で320m/h運転を開始しても宇都宮~盛岡間で360km/h運転を開始してもダイヤの作り方が雑なゆえ所要時間短縮を図れなかったら意味がない。最高速度引き上げより前にはるかに安価にできる既存列車の所要時間短縮を図ろうよ本当に。
1.3. 純増発の「はやぶさ」設定へ
次に東京15時28分「はやぶさ33号」新函館北斗行き。東北新幹線内の停車駅は東京を出ると上野、大宮、仙台、盛岡、新青森と主要駅にしか停車せず、プレスリリースでは増発区間は仙台→新青森間としており、新青森→新函館北斗間は前を走る東京15時20分発「はやぶさ31号」を新函館北斗行きから新青森行きに短縮した代替として設定している。北海道新幹線内新青森→新函館北斗間は運転時刻が変わっていないので東京発時刻が8分繰り下がった分そのまま所要時間を短縮しているほか、新青森行きに短縮した東京15時20分発「はやぶさ31号」新青森行きから新青森で連絡を受けるので、乗り換えは生じるものの乗車チャンスは失われていない。
しかし、東京15時28分発の「はやぶさ」なんて臨時列車を含め2019年現在運転していないのである。東京→仙台間でこの時刻で運転している列車なんてないのである。
ではなぜ増発区間を仙台→新青森間としたのだろうか。その答えはただ1つ。2018年3月17日ダイヤ改正で定期化した東京15時44分発「はやぶさ29号」仙台行きを臨時列車に戻すこと。
東京15時44分発「はやぶさ29号」仙台行の新青森延長運転が週3日以上行われているためいずれは新青森まで定期化するのだろうとは思っていたが、東京発時刻まで変えることにしたらしたようだ。
では東京15時44分発の「はやぶさ」は完全消滅するのだろうか。いやおそらくこれからも臨時列車として残るのではないだろうか。2019年現在東京16時台発の「はやぶさ」は東京16時20分発定期「はやぶさ31号」新青森行き、東京16時28分発臨時「はやぶさ399号」新青森行き、東京16時44分発臨時「はやぶさ63号」新青森行きの3本を運転している。今回のダイヤ改正で東京15時28分発の「はやぶさ」の増発を行うが、16時台同様の設定とすれば東京15時44分発「はやぶさ」が臨時列車として残る可能性は高い。そう考えると、東京15時44分発「はやぶさ」は臨時列車に格下げしながらも運転を継続するのではないだろうか。
なお、東京16時28分発「はやぶさ399号」新青森行きは今回のダイヤ改正で定期化し「はやぶさ37号」になるほか、二戸、八戸を通過とするため新青森到着時刻を19時49分から19時41分に繰り上げる。また東京15時20分発「はやぶさ31号」は先述したように新函館北斗行きから新青森行きに短縮するが、盛岡→新青森間で各駅に停車するにもかかわらず原因不明の所要時間短縮を実施し、新青森到着を18時43分から18時39分に4分繰り上げる。整備新幹線区間でまだ国の認可が下りていないので、260km/hから320km/hに引き上げているはずはないのだが…
このほかにも、東北新幹線内での時刻変更はないが、東京10時20分発「はやぶさ15号」新函館北斗行きは新青森行きに短縮し「隼17号」に改番したほか、代替として後続の東京10時44分発「はやぶさ17号」新青森行きを新函館北斗行きに延長し、「はやぶさ19号」に改番した。この東京10時44分発「はやぶさ19号」は一ノ関に停車することから、史上初となる東京発着の一ノ関停車の北海道新幹線を運転することとなった。これにより後続の新函館北斗行き「はやぶさ」との間隔が2時間から1時間36分に短縮し運転間隔が均等化したのだが、一ノ関停車分所要時間が延び東京→新函館北斗間の所要時間は3時間13分から3時間17分に延びた。
今回下り列車(新青森方面)で増発・定期化する「はやぶさ」を見る限り、既に定期列車として運転している「はやぶさ」の続行列車である印象が否めない。盛岡以北も16両対応にしてE5系16両固定編成を入れれば毎時1本のままで済んだのにとは思う。
なお上り列車(東京行き)は全て臨時「はやぶさ」の定期列車への格上げである。
新青森8時29分発「はやぶさ12号」東京行きは新青森8時20分発臨時「はやぶさ46号」東京行きを定期列車にしたものだが、定期化に際し七戸十和田と二戸を通過とし新青森発時刻を9分繰り下げた。
また新青森11時20分発「はやぶさ20号」東京行きは新青森11時15分発「はやぶさ52号」東京行きを定期化したものだが、定期化に際し八戸を通過とし新青森発時刻を5分繰り下げた。
最後に増発する新青森16時17分発「はやぶさ36号」東京行きは新青森8時20分発臨時「はやぶさ46号」東京行きを定期列車にしたものだが、定期化に際し七戸十和田と二戸を通過とし新青森発時刻を7分繰り下げた。
今回増発した「はやぶさ」のほぼ全てが臨時「はやぶさ」の定期化であることから、夏のお盆や冬の年末年始などの多客期に運転する最大本数に変わりはない。今回の定期化に伴い停車駅を減らしていることを考えると、多客期の輸送コストを抑えようとしているのではないだろうか。
なお今回のダイヤ改正では、秋田新幹線「こまち」の定期列車は号数変更こそあったが増発がないどころか1分たりとも時刻変更をしていない。
そういえば、10両編成を全てE5系で統一する構想はその後どうなったのだろうか。もうそろそろ山形新幹線「つばさ」と併結する「やまびこ」をE2系からE5系に置き換え始めても良さそうだと思うのだが…
2. 上越新幹線で上野発着定期列車復活へ
今回の2020年3月14日上越新幹線ダイヤ改正では、「たにがわ」を1往復増発する。
今回のダイヤ改正では新潟6時07分発「Maxとき300号」東京行きと東京18時52分発「Maxとき341号」の1往復がE4系からE2系に運用変更し、それぞれ「とき300号」「とき341号」として運転することとなった。
ただ、通勤利用の多い時間帯にE4系16両の1634席からE2系10両編成の813席に半減してしまっては運びきれないので増発したい。ただ東京駅も東北・上越・北陸の3新幹線で毎時15本までしか運転できない。そこで考え出されたのが、上野発着定期「たにがわ」の増発である。
今回増発したのは高崎7時17分発「たにがわ474号」上野行き(平日運転)と上野18時52分発「たにがわ473号」高崎行き(毎日運転)の1往復となっている。上野行き「たにがわ474号」は「とき300号」の続行列車として、上野始発「たにがわ473号」は「とき341号」の後続列車として運転する。
1997年10月1日の北陸新幹線長野開業に伴うダイヤ改正で東京駅東北・上越・北陸新幹線ホームを1面2線から2面4線に拡張したことで上野発着の定期列車は消滅していたが、今回のダイヤ改正で約22年5か月半ぶりに上野発着の定期新幹線が復活することとなった。
これを見るに、E4系2本が運用離脱しそうであるが、E5系の東北新幹線への投入により余剰となったE2系2本を上越新幹線向けに転用することとしたようだ。このため、プレスリリースにはない列車名称の変更を行った「Maxとき」がほかにもあるのではないだろうか。
本来であれば、時間帯からしてE2系10両編成ではなくE7系12両編成で置き換えるはずだったものだと思われるが、E7系8本とW7系2本が被災したため致し方なく行ったのだろう。
ちなみに高脇7時17分発「たにがわ474号」上野行きは、「とき」と併結しない定期列車にも関わらず運転時刻を見るに本庄早稲田を通過する見込みだ。「たにがわ」も定期列車の「とき」と併結しない列車は全列車各駅に停車していたのだが…
なお今回のダイヤ改正では、上野~大宮間の所要時間短縮は図られなかった。現在JR東日本が保有する新幹線車両で一番走行性能の悪いE4系の延命が決まったため、最高速度引き上げを見送った可能性もある。ただ遅くとも北陸新幹線が敦賀まで延伸し上越新幹線がE7系で統一するはずの2023年3月ダイヤ改正までにE4系は全て廃車になるはずなので、2023年まで長い目で見守ろう。
このほか、北陸新幹線は2020年3月14日ダイヤ改正で定期列車の運転本数を戻すはずなのだが、調整が間に合わずプレスリリースの記載は見送ったようだ。
3. 結び
今回の2020年3月14日東北・上越・北海道新幹線ダイヤ改正では、東北新幹線「はやぶさ」の増発を行ったほか、上越新幹線でもE4系置き換えに伴う「たにがわ」の増発を実施した。
今後最高速度の引き上げが続々行われる中、JR東日本管内の新幹線でどのようなダイヤ改正を実施するのか、見守ってゆきたい。
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