JR東海は2020年1月22日、プレスリリースにて2021年度から2025年度にかけて新型車両315系を投入することとした( 在来線通勤型電車の新製について )。今回はこれから、投入完了予定の2026年3月までに実施予定のJR東海名古屋地区のダイヤ改正について予測していく。
315系投入に伴うダイヤ改正のうち静岡地区各線についてはこちら!
1. 新型車両投入で8両固定編成登場へ!
JR東海では2021年度から2025年度にかけ新型車両315系を投入する。
形式名称は315系で、313系から2を足すこととなった。JR他社と比べれば普通に付番したように思えるが、新幹線は3車種続いて700を使用しているし、特急型気動車はキハ85系をHC85系で更新するため85を使用し続ける見込みだ。そう考えると新型通勤型車両も○○313系になる可能性も否定はできなかっただけに、ひとまず国鉄時代からの付番方法を踏襲することにしたようだ(とはいえ、直流通勤型電車は新幹線に次いで2番目に数字が枯渇する見込みなのだが…)
今回導入する315系はオールステンレス製で、前面形状は角ばっている。313系の前面曲面仕様が113系をモチーフにつくられたものであるとするなれば、315系の角ばった前面形状は211系をモチーフにしているのだろう。
今回の新型車両投入では315系を352両投入する。JR時刻表を刊行している交通新聞社の交通新聞によれば、内訳は8両固定編成が23本と4両固定編成を42本投入するとしている。313系のように2両だの3両だの4両だの6両だの「セントラルライナー」専用仕様だの発電ブレーキ搭載だので番台を細かく区分する必要はなく、2種類に集約するようだ。これによりJR東海史上初の通勤型電車による8両固定編成を導入することとなった。
そもそも増結して8両にするのは名古屋都市圏を走る名鉄でも行っているのだが、通勤型車両による8両固定編成となると名古屋都市圏では初となる。
通勤型電車による8両以上の固定編成は東京都市圏ではよく行われているが、大阪都市圏ではOsaka Metro(御堂筋線の10両固定編成)及び直通する北大阪急行、JR西日本、阪急、京阪、泉北高速の6社しか行っていない。世界的に見ても通勤型電車の8両以上の固定編成を運転しているのはソウルメトロ及びKORAILの走るソウル都市圏、北京地下鉄、上海地下鉄、広州地下鉄など人口2,000万人程度かそれ以上の人口規模の都市圏では行っているものの、それより人口規模が小さいと原則6両固定編成が最大となることが多い。1,100万人の人口を擁するパリ都市圏も地下鉄の最大固定両数は6両で、例外はロンドン都市圏の8両固定編成と香港都市圏の最大12両固定編成くらいしかない。人口1,000万人程度の名古屋都市圏で8両固定編成を持つというのは突飛ではないものの、かなり珍しいことである。
1.1. 新型車両投入で国鉄、昭和、平成1ケタ消滅へ
今回の新型車両315系の投入では、少なくとも211系を置き換えることは内定している。
現在JR東海が保有する通勤型電車は211系250両(うち神領車両区4両編成22本+3両編成17本、静岡車両区3両編成31本+2両編成9本)、213系28両(2両編成14本)、311系60両(4両編成15本)、313系539両となっている。211系、213系、311系の3車種の合計は338両で、315系の導入予定本数352両の方が14両多い。つまり315系の投入が完了する見込みの2026年3月ダイヤ改正時点では、JR東海の持つ通勤型電車は313系と315系の2車種のみになるほか、場合によっては313系の置き換えも始めている可能性がある。中央線「セントラルライナー」用だった313系8000番台3両編成6本も置き換え対象に入っているということなのだろうか。
もしこれらの車両置き換えが実現するのであれば、国鉄時代に製造した211系8両のみならず、昭和63年に製造した残りの211系や平成に入ってから製造したJR東海管内の213系や311系も置き換え対象ということになる。313系の製造初年は1999年=平成11年であることから、315系の投入が終わるころにはJR東海の保有する車両は国鉄時代どころか、昭和を超え、平成1ケタも消滅する。駅名標や車両符号などの書体やドア閉時の笛はガッツリ昭和国鉄なのに、車両は全て平成以降に投入した車両に統一するようだ。
名古屋を発着する近鉄名古屋線は大手私鉄の幹線のはずなのに令和になっても通勤型車両がオール昭和なのだが、JR東海の車両更新サイクルがやや早いせいかいろいろなところと足並みがあっていないような気がするのは気のせいだろうか?
また大和路線大和路快速やJR京都線・JR神戸線快速などでほぼ最前線で運用中のJR西日本221系と経年数が同じ311系4両固定編成をJR西日本岡山支社に恵むだけでも相当な社会貢献だと思うのだが、JR東海の315系の投入を完了して311系が全車解体または他社転属してもJR西日本に113系や115系が元気に残っていると思うのは私だけだろうか…
なお新型車両315系の投入線区は「名古屋・静岡都市圏を中心に、中央本線、東海道本線、関西本線等に順次投入する計画」としている。
まず8両編成が入り得るのは最大10両での運転を行っている中央線と最大8両での運転を行っている東海道線となる。ただ東海道線のうち静岡地区では8両での運転は平日に1往復のみとなっているため8両固定編成の投入は非現実的であり、名古屋地区のみとなるのだろう。
そうなると、自動的に関西線と静岡地区の東海道線には4両固定編成を導入することとなる。
このほか、3線区「等」と記載しているため、他線区にも投入する可能性がある。考えられるのは最大で5両編成を運転している御殿場線と最大で4両編成を運転している武豊線だろう。身延線や飯田線、中央線中津川~塩尻間は原則2両編成のため、最小でも4両固定編成の315系の乗り入れは難しそうだ。
それでは投入する各線で新型車両導入に伴いどのようなダイヤを組むのか、見ていこう。
2. 東海道線名古屋地区では快速以上を8両固定編成のみで運用か
まずは名古屋地区東海道線の車両を管理する大垣車両区では新型車両315系をどのように配置するのだろうか。
そもそも名古屋都市圏は旧来の予測を覆し2020年現在も人口が増え続けており、恐らく2030年頃までは人口増加傾向になるものと思われる。つまり新型車両315系の投入計画が決まっている2026年度までは減車・減便を考える必要はなく、むしろ増車を考える必要さえあるほどだ。
2020年現在東海道線では新快速・快速が昼間でも毎時1本以上は名古屋地区東海道線で最長の8両で運転しているし、土休日も少なくとも毎時2本は8両で運転している。
この8両編成は2020年現在原則313系6両+313系2両で組んでおり、313系6両編成は17本配置があるが、このほかに平日朝ラッシュ時に4両+4両=8両の運用が5運用あり、うち4運用は311系を2本つないだもの、1運用は313系4両固定編成を2本つなげたものとなっている。
4両編成は昼間はたいてい東海道線普通列車として運用するがその東海道線普通列車は平日朝ラッシュ時は313系4両+313系2両=6両として運転することが多いため311系による8両運転分は8両固定編成に置き換えても差し支えないだろう。
このほかに311系は武豊線直通運用で2運用あるので、先述の313系4両編成2本つないだ8両編成と車両を交換して武豊線は313系で統一するのだろう。
そう考えると、東海道線の8両運用を全て置き換えるのに必要な本数は8両固定編成23本で、315系の8両固定編成の導入本数と一致する。つまり315系の8両固定編成23本は全て東海道線用として投入するということなのだろう。
でもどうせロングシートの315系8両固定編成を全て東海道線に投入し東海道線の快速以上を全て315系8両固定編成で運転するのであれば、8両中1両を名鉄特別車やJR北海道千歳線快速エアポートuシートのような着席保証車にしてしまえばいいじゃない。
そもそも名古屋地区の東海道線は国鉄時代の大幅な値上げを名鉄との競合を理由に名古屋を起点として主要駅への利用の際にJR東日本やJR西日本の電車特定区間と同水準の特定運賃を設定することで大幅値引いている。1987年の国鉄分割民営化=JR東海発足後はJR東海は消費税増税分以外の値上げを一切行っていないが、名鉄が大幅に値上げしたために2000年以降はほとんどのJR東海特定運賃設定区間で名鉄より安くなっている。
そんな中わざわざ名鉄より安い特定運賃を敷いたって収入は減るだけで、名鉄から客を奪ったって特定運賃の敷いていない中央線より1km当たりの乗客単価は少なくなってしまう。
それを補うために、8両固定編成のうち1両に着席保証の特別車を設け、終日に渡り料金を徴収することで特定運賃設定による減収分を補填しようとしているのではないだろうか。もし東海道線の快速以上に特別車を設けるのであれば、名鉄特急特別車利用者層の旅客を奪うことができ、一石二鳥である。東海道線は名古屋~岐阜間の輸送では名鉄に完勝してしまっているし、名古屋~岡崎間も現状でほぼ互角だからなぁ(東海道線向けに30km/h運転を実施したら相当ではあるが)…
ただ、プレスリリースの車両諸元には315系はロングシートとしか書かれていない。名古屋地区東海道線の313系は転換クロスシート車なのであえて特別車に付加価値を付けるために普通車をロングシートとするために記載した可能性もあるが、そもそも従来通り普通車しか連結する気がなく全てロングシートとする可能性も十分考えられる。つまり名古屋地区の東海道線でクロスシートに乗りたいなら、315系導入前がオススメである。
特別車というおいしい特典をJR東海は活かすことができるのだろうか。
3. 中央線で3両固定編成を淘汰か
では次に名古屋地区中央線では新型車両315系をどのように配置するのか。
中央線名古屋~中津川間では、4両、6両、8両、10両で通勤型電車を運転している。神領車両区には3両編成の211系や313系が多くあるが、2本つないで6両として運用することが多い。つまり、名古屋地区の中央線に奇数両の固定編成は要らないのだ。
そう考えると運転台を削って導入コストも抑えられる長編成化を行った方が合理的である。
昼間に一部で8両での運転を行っているので8両固定編成での導入も良いが、いかんせん神領車両区には十分な2両編成がないほか東海道線用に使いきってしまった。そこで名古屋地区東海道線に315系8両固定編成を導入し玉突きで追い出した313系6両固定編成を神領車両区に転属させ、昼間は6両固定編成、朝夕ラッシュ時は新型車両315系を含む4両固定編成を連結した10両での運転が良いのではないだろうか。
そう考えると、中央線で起こり得る車両の置き換えは、313系及び211系の3両編成2本分で313系6両編成1本分で置き換え、211系4両編成を新型車両315系4両編成で置き換えということになるのだろう。
211系3両編成は17本、313系3両編成(普通用)は10本あるから、東海道線から転属してくる313系6両編成17本で置き換えが可能だ。いや、ここで中央線「セントラルライナー」用3両固定編成6本も置き換え対象にしてしまえば、ほぼきれいに6両編成17本と置き換えができる。どうやら313系8000番台旧「セントラルライナー」用編成も置き換え対象に入っているとみていいようだ。
なお313系3両編成のうち少なくとも普通用は廃車対象には入っていないはずなので、静岡車両区に転属させるのではないだろうか。神領車両区の313系は転換クロスシート車ではあるが、静岡車両区の313系も2両編成の一部は転換クロスシート車だし、朝夕には東海道線に入り得る。そう考えると別に転換クロスシートの3両編成だからと言って静岡に転属させてはいけない理由にはならないだろう。
また神領車両区の211系4両編成は22本あることから、新型車両315系も4両固定編成22本投入して置き換えるのであろう。
こうすることで、これまで10両で運転するには運転台が6か所に入ってしまっていたものを、新型車両315系導入後は4か所で済み定員増加を図ることができる。
ただ、313系6両固定編成は全てクロスシート車のため、ラッシュ時の混雑が激しい中央線にはやや不向きな気もするが、車両繰り上そうしないとやりくりが付かない。
では神領車両区に8両編成を集中投入するという人に告ぐ。平日朝ラッシュ時の10両編成を8両+2両で運用すると言うが、その2両編成はどこから持ってくるのですか?新製はできませんけど?転属ですか?関西本線や武豊線はラッシュ時の多くは既に4両化しているので、中央線に割くほどの2両編成はもうないですが?そして飯田線用213系の置き換えはどうやってやるんですか?あと8両固定編成を中央線に入れて昼間はどうするんですか?昼間の6両や4両で運転している列車は減便ですか?そこまで貴方は考えましたか?
そう考えると、神領車両区に8両編成を全配置するとどう計算しても運転台が足りず、他線への配置転換による旧型車置き換えもできない。つまり、中央線に8両固定編成を導入するメリットがないのだ。そう考えると、315系8両固定編成は東海道線への導入が主で、中央線は主に4両固定編成の導入となりそうだ。
4. 関西線では211系の置き換えのみか
では名古屋地区JR東海在来線で3番目の利用を誇る関西線では新型車両315系はどのように配置するのだろうか。
そもそも関西線の電車は神領車両区に所属していることから、朝夕ラッシュ時を中心に運転する4両編成は中央線と共通運用と化してしまっている。そのため2020年現在211系4両編成による関西本線運用があり2026年までに315系に置き換えられることは間違いない。
しかし、関西線では朝夕ラッシュ時に2運用のみ3両+2両=5両での運転があり、うち1運用は平日朝ラッシュ時は中央線運用に就いている。
ただ関西線は運転本数が少なく編成も短いのに混雑率は130%とJR東海名古屋地区では一番高くなっており、減車は考えにくい。そう考えると、今回の315系投入に伴い朝ラッシュ時も3両固定編成を2運用設定して混雑率を緩和する可能性は考えられなくもないのだが、そのためには神領車両区に関西線の朝夕ラッシュ時専用の313系3両固定編成を配置するということになる。
では関西線は5両編成までしか運転できないのか。快速みえや特急「ワイドビュー南紀」は通常は最大4両での運転であるが、特急「ワイドビュー南紀」は多客期に最大6両編成での運転を行っている。関西線は単線区間が多いため6両編成の運転ができるということは6両編成の列車交換ができるということであり、6両編成での運転が可能なはずだ。またJR東海発足後に設置した春田も7両分のホームがあることから、6両編成での運転は可能である。
そう考えると、315系の投入が進むにつれ関西線で朝夕に限り6両運転を開始する可能性はありそうだ。
なお213系は2020年現在飯田線のみで運用しているが、名古屋地区東海道線や関西線で315系投入により余った313系2両編成で置き換えるのであろう。
5. 投入スケジュールはどうなる
では以上を踏まえた上で、名古屋地区の315系投入スケジュールはどうなるのだろうか。
まずJR東海が一番やりたいのは中央線に残る211系のうち国鉄時代に投入した4両編成2本を置き換えることなので、新型車両315系4両固定編成を中央線に真っ先に投入するのは間違いなさそうだ。
ただ、その後の投入スケジュールは不透明な点が多い。
もし東海道線の快速以上に特別車を設けるのであれば、短期に投入して特別車サービスをとっとと始めて少しでも早く稼ぎたいところである。そう考えると次に投入するのは東海道線向け8両固定編成になるはずで、早いと8両固定編成の投入は2023年3月のダイヤ改正までに終わりそうだ。
ただ平日朝ラッシュ時には311系8両編成による新快速を運転しているため、311系の置き換えが必須となる。そのまま置き換えて廃車にしてしまうと、211系より先に311系が廃車になってしまう(といっても製造年は3年程度しか変わらないのであるが)。
そう考えると、315系8両固定編成を23本短期間に投入したのち、311系を一時的に古巣中央線に転属し、先に211系4両固定編成の大部分を置き換える可能性がありそうだ。
あとは、315系8両編成の投入により玉突きされた313系6両固定編成を中央線に転属させ211系3両固定編成を廃車にし、315系4両編成で中央線に残った211系4両固定編成及び311系を置き換えてしまえば、名古屋地区の在来線電車は313系と315系の2車種のみに限定しそうだ。
これにより大きく東海道線では315系8両固定編成と313系4両編成及び2両固定編成、中央線名古屋~中津川間では313系6両固定編成と315系4両固定編成が運用することとなり、大きく簡素化されそうだ。
6. 結び
今回の2026年3月までに実施予定のJR東海名古屋地区ダイヤ改正では、新型車両315系の投入により211系及び213系、311系のほか313系8000番台も置き換え対象となっている可能性が高いことから、名古屋地区の在来線電車は315系と313系の2車種のみに再編することとなった。
また8両固定編成が東海道線のみに投入する公算が高いことから、東海道線の快速以上で名鉄特別車のような着席保証サービスを実施する可能性もある。
今後JR東海名古屋地区の在来線でどのようなダイヤ改正を実施し、どのようなサービスを提供するのか、見守ってゆきたい。
コメント
8両固定編成が神領集中という意見が多すぎて、ホント見てられないですね…。
混雑緩和観点からも、東海道線快速系統への導入が妥当でしょう。神領への配置がゼロになるかはわかりませんが…。
313系の6両編成は一部編成の中間車を外して4両編成にし、外れた中間車2両を既存の2両編成に組み込んで4両編成を増やすというのもアリかと思います。
その方が融通が利きそうな気がしなくもないような…。
あと、関西の通勤型8両固定編成は京阪6000系も対象なので5社ですね。