JR東海は2020年1月22日、プレスリリースにて2021年度から2025年度にかけて新型車両315系を投入することとした( 在来線通勤型電車の新製について )。今回はこれから、投入完了予定の2026年3月までに実施予定のJR東海静岡地区のダイヤ改正について予測していく。
315系投入に伴うダイヤ改正のうち名古屋地区各線についてはこちら!
1. 新型車両投入で4両固定編成復活へ!
今回の2026年3月までに実施予定のJR東海静岡地区ダイヤ改正では、新型車両315系の配置に伴い静岡地区の4両編成の配置が復活する。
静岡地区では2004年10月16日ダイヤ改正まで東京からの113系11両編成(うち2両グリーン車)の乗り入れが静岡や島田まであったほか、静岡支社管内運用でも2007年3月17日ダイヤ改正の引退まで113系は3両編成のほかに4両編成、6両編成の配置があった。つまり静岡地区の4両固定編成の配置は14年以上ぶりの復活となる。
なお211系にはトイレの設置がなかったが、315系は全編成にトイレを設置することとなった。これにより静岡地区の全ての列車でトイレを設置することになる。
では315系導入後の静岡地区在来線でどのような変化が起きるのか、予測していく。
2. 静岡地区東海道線でラッシュ時に減車実施か
まずは一番車両を使う平日朝夕ラッシュ時は新g田車両315系の導入によりどのように変わるのだろうか。
静岡都市圏では名古屋都市圏と異なり既に人口減少が始まっており、減車・減便を図ってもおかしくない状況にある。実際混雑率は安倍川→静岡間では100%、東静岡→静岡間では96%となっており、他の都市圏(110%~120%程度)と比べても低い。快速列車がひっきりなしに走る路線であれば混んでいる快速列車と空いている普通列車の平均で低くなってしまうことはあるのだが、静岡地区東海道線は「ホームライナー」を除き全て普通電車のみの運転なのでそんなことになるはずもない。そう考えると、10%程度減便・減車してもおかしくはない。ちなみに静岡鉄道(しずてつ)の混雑率は66%である。
現在静岡駅を通るの東海道線では昼間は3両編成毎時6本による運転だが、朝夕ラッシュ時には3両+3両=6両や3両+2両=5両による運転となる。また1往復(朝ラッシュ時の島田→静岡方向で運転)のみ8両での運転を行っている。
315系の4両固定編成は名古屋地区と静岡地区合わせて42本導入するとしているが、もし3両+2両=5両を4両編成で置き換えようとすると2両編成の編成数分4両編成を入れなくてはならなくなる。211系2両編成は9本、313系2両編成は10本あることから、合計19本を置き換え対象と置くことができる。しかもこれと名古屋地区中央線向け22本と合わせると見事に41本となり、ほぼ315系の導入編成数と一致してしまうのである。つまり315系4両固定編成は3両+2両=5両の運用を置き換えると見てよさそうだ。1両減車はするが、運転台の数を減らすことで定員の縮小を最小限にするようだ。
いやまて。211系には3両編成もあり、静岡車両区には31本配置している。19本置き換えただけでは211系が12本残ってしまうではないか。これでは211系の完全撤退ができない。
そこで考えられるのが、名古屋地区中央線向け車両などを配置する神領車両区の313系10本を静岡車両区に転属させること。車内はクロスシートであるが211系3両+313系2両で運転する313系2両編成はロングシートではなくクロスシートだし、昼間を中心に御殿場線で運転してしまえば違和感はない。
残る3両編成2本は、313系非ワンマン用2両編成10本を3本使ってつなぎ合わせれば、何とかなりそうではある。平日朝ラッシュ時に211系3両+211系3両を6運用分運用できているとすると、2両編成で残った7本は平日朝ラッシュ時の315系4両編成との増結用とするのが一番だろう。
あと減車するとすれば、1往復のみ運転している3両+3両+2両=8両の運転を315系4両+313系3両=7両の運転にすることくらいだろうか。
これらのことを総合すると、新型車両315系の投入により静岡車両区でも211系を引退させることができるほか、315系が313系と連結できないというのは考えにくく、むしろ連結しないと静岡地区のラッシュ輸送が回らない。313系は211系までの形式と併結できるのと同様、315系にも併結できるのではないだろうか。
3. 静岡地区東海道線の昼間は3両編成確保で概ね据え置きか
新型車両315系の投入により昼間の静岡地区東海道線ではラッシュ時に減車を図る見込みであることはわかったが、昼間はどうなるのだろうか。
昼間の静岡駅に出入りする東海道線の3両編成の運用数は31運用で、313系3両固定編成27本だけでは足りない。ただ先述した通り神領車両区の313系3両固定編成10本を捻出させ静岡地区に転用することができるのであれば、合計37本となり31運用を賄うことは十分に可能なため昼間の三島~島田間及び興津~浜松間運転の3両編成毎時3本ずつの運転は313系のみで維持できそうだ。
欲を言えば静岡~焼津~藤枝間は立ち客がそこそこ出るほど混んでいるので興津~浜松間運転の昼間の列車を3両から4両に増結してほしいとは思うのだが、静岡市+焼津市+藤枝市+島田市の人口が2015年には107万人いたものが2020年初めには105万人まで減っており、2%ほどの人口が5年間で減ってしまっている。人口が減っていて今後も人口減が予想されるのに、今から増結しようなんて普通は考えないので、少なくとも昼間の列車の減便なしの増車は考えられないだろう。
またもし昼間に4両編成を重点配置すれば静岡駅を通る東海道線を昼間毎時4本程度に減便することもできるが、今の状況で静岡駅を通る東海道線を減便したら2019年10月1日に消費税増税分以上の値上げをしたとはいえ昼間6分間隔運転のしずてつに大きく負けるほか、本気で静岡県の怒りを買いリニア中央新幹線を通せなくなる。そう考えると、静岡周辺では昼間の減便は考えにくいだろう。
あと考えられるとするならば、島田~掛川間を昼間毎時3本から毎時2本に減らすこと。同じ静岡県内ではあるが静岡都市圏と浜松都市圏の境界で利用者は少なく、当該区間に限れば3両編成のまま昼間毎時2本に減らしても全員座れる。また掛川~浜松間では昼間毎時4本運転を行っているものの3両編成20分間隔のうちに60分間隔で4両編成毎時1本を入れており混雑が短い3両編成に集中しやすくなってしまっているが、もし島田~掛川間が昼間毎時3本から毎時2本に減便すれば30分間隔間隔での運転となり、掛川~浜松間で静岡方面直通の30分間隔と掛川止まりの30分間隔を合わせて均等15分間隔でダイヤを組むことができる。ただ、掛川止まりではそこそこ利用の多い菊川がかわいそうなので、掛川~浜松以西の運転を菊川~浜松以西の運転に延ばしても良いかもしれない。
4. 新車置き換えで熱海発着東海道線の減便実施か
では今回の新型車両315系の導入で熱海乗り入れにより熱海発着の東海道線はどのように変化するのだろうか。
東海道線の熱海乗り入れは伊東線1駅分(熱海~来宮間)1.2kmを事実上JR東日本の第三種鉄道事業区間をJR東海の車両が第二種鉄道事業として乗り入れている。つまり熱海に乗り入れれば乗り入れるほどJR東海はJR東日本に対し線路使用料を支払わなければならない(実際のところは国鉄分割民営化後からの暗黙の了解なのか、JR各社間で他社列車運転距離を調整して相殺していることが多い。大垣発着のJR西日本車を早朝・深夜に計3往復設けていたのを、JR東海車である383系特急「しなの」のJR西日本管内大阪乗り入れをやめた瞬間に取りやめたのが最たる例)。
そう考えると、熱海~沼津間運転の昼間3両運転毎時3本を4両編成毎時2本に削減して線路使用料を削減したいとJR東海が思うのは当然の発想だろうし、それで在来線が不便になって新幹線を使ってくれればむしろありがたいと思うに違いない。別に熱海~三島間は山越えしているし都市圏も独立しているし、函南町の中心に近いのは伊豆箱根鉄道駿豆線大場であり函南駅を発着する列車が少なくたって函南町の大部分が影響がないことから地域輸送性も考えなくてよい。これらを考えると熱海~三島・沼津間の列車は315系の投入が優先的に進み、昼間に減便を図る可能性が高そうだ。
ちなみに熱海で接続するJR東日本東海道線の2018年度の輸送密度は、小田原~熱海間の平均で、42,766人/日・往復となっている。このうち「踊り子」など特急利用が約5,000人/日・往復いることから、普通列車の平均輸送密度は約38,000人/日・往復となり、昼間は毎時10両あれば足りてしまう。
なお2015年の大都市交通線センサスのデータによれば4両編成を昼間に毎時2本で運転している川越線川越~西川越間は26,258人/日・往復、八高線八王子~北八王子間は33,280人/日・往復となっている(なお小田原~早川間では19,580人/日・往復となっているが、おそらく大都市交通センサス特有の東京から離れすぎると正確さが著しく低下する現象が起きているためだと思われる)。小田原~熱海間の列車はほとんどが10両編成以上の運転であるため最悪昼間毎時1本あれば運べてしまうだし、地域輸送性や他線区との比較で考えても毎時2本あれば十分に利便性を保てるはずで、現状の昼間に毎時3本である必要性はない。
つまり2020年現在の小田原~熱海間昼間の毎時3本運転は熱海で連絡するJR東海が3両編成という短さで毎時3本運転しているからJR東日本もそれに接続するかのように毎時3本運転しているだけなのだ。
このことから、JR東海が熱海発着列車を3両から4両に増車して昼間毎時3本から毎時2本に減便できれば、JR東日本も接続する列車がなければ運転する理由が薄れるので、小田原~熱海間で昼間毎時3本から毎時2本に削減することができる。つまりJR東海東海道線の熱海発着の減便はJR東日本も待ち望んでいるようだ。
もしこれが進めば東海道線小田原~熱海~三島間は昼間毎時3本から毎時2本に削減することになりそうだ。
ただ、JR東日本車による沼津発着のE231系やE233系10両編成は特に平日朝は混雑をさばくのに重宝しているし、ラッシュ時のこの乗り入れ分をJR東海で車両を賄おうとすると車両増備が不可欠で多額の費用が掛かるため、おそらく東京を経由する東海道線の三島・沼津乗り入れが315系の導入に伴い廃止するというのはないだろう。
あと、E231系やE233系10両編成の沼津乗り入れを今後も続けていくのであれば、2021年春に実施予定の熱海を跨ぐICカード定期券発行開始と同時に、函南、三島、沼津の3駅にICカードグリーン券売機を設置しないのだろうか。
さらには、JR東海車の熱海乗り入れ縮小に伴い運行距離精算を縮小できることから、JR東日本車による臨時快速ムーンライトながらが廃止になる可能性も否定はできなさそうだ。
5. 御殿場線と身延線で朝ラッシュ時に減車へ
このほかに静岡地区の在来線である御殿場線や身延線は新型車両315系の乗り入れによりどうなるのだろうか。
御殿場線では、そもそも113系時代には普通列車は最長4両編成までしか乗り入れていなかったほか、朝ラッシュ時にこそ3両+2両=5両での運転を行っているが空いているし他の時間帯では最大3両までの運転しか行っていない。そう考えると格好の減車対象であり、朝ラッシュ時の運用を315系4両固定編成に真っ先に置き換えられそうだ。
そう考えると、静岡地区の315系の投入は真っ先に朝は御殿場線運用、昼以降は熱海乗り入れ運用から入るのではないだろうか。
このほか身延線は既にほとんどが313系での運転となっているし、2両運転がほとんどである。ただ平日に1往復だけ富士~西富士宮間で211系3両+313系2両による5両で運転する列車があることから、315系4両編成が乗り入れるとしたらこの1往復だけだろう。
6. 結び
今回の2026年3月までに実施予定のJR東海静岡地区ダイヤ改正では、新型車両315系の投入に伴い211系が運用を離れることとなり、全列車に車内トイレを設置する見込みだ。
ただ、ラッシュ時の減車や昼間の一部区間での減便など、見直し部分もありそうだ。
今後JR東海静岡地区でどのようなダイヤ改正を行うのか、見守ってゆきたい。
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