JR西日本は10月24日、新快速に有料座席サービスAシートを2019年春より導入すると公表した( 2019年春 新快速に有料座席サービス「Aシート」を導入します )。今回はこれから、2019年3月のJR西日本新快速ダイヤ改正について予測していく。
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1. 新快速、禁断の有料座席サービス導入
今回の2019年3月JR西日本ダイヤ改正では、JR神戸線・JR京都線・琵琶湖線などを走る新快速に、有料座席サービスAシートを導入する。JR西日本では2018年4月27日公表の中期経営計画2022において2023年春までに新快速に有料座席サービスを導入するとしていたが、たった1年余りで導入されることとなった。
Aシート導入される新快速は1日上り下り合わせて4本で、琵琶湖線・JR京都線・JR神戸線での運転となる。つまりAシート導入当初は、長浜以北の北陸本線や湖西線、姫路以西の山陽本線には乗り入れないということのようだ。ともなると導入当初のAシート運転区間は、長浜~米原~京都~大阪~三ノ宮~姫路が最大ということになりそうだ。
新快速Aシートは2019年春から導入予定としているが、おそらく2019年3月ダイヤ改正時に開始されるのだろう。Aシートが連結されるのは9号車で、付属4両編成の最も姫路寄りの9号車となる。改造されるのは223系1000番台で、9号車の3ドアのうち両端の2ドアを両開き開口幅1,300mmのまま残し、中ドアを加古川線125系電車のようにドアもどきとして残している。Aシートが設置されるのは2編成のみとなっているが、今後拡大していくのであろう。
JR東日本の場合、2階建てグリーン車サービスを開始する際には、全編成2階建てグリーン車連結に揃うまで普通車自由席として2階建て車両を解放していたが、JR西日本の場合、ハイグレード座席のAシートを設置した時から早速料金を徴収するようだ。
過去にJR西日本では1996年より阪和線関空特快ウイング及び関空快速の一部で指定席を連結していたが、自由席と同じ設備であったため1998年に足早に指定席をやめてしまった。今回の新快速Aシートも関空特快ウイングの二の舞にならないか見極めるため、一部列車から社会実験的に導入することとしたのだろう。
1.1. 12両のままAシート導入へ
今回の2019年3月JR西日本ダイヤ改正より実施される予定の新快速Aシート連結がJR東日本中央線快速のグリーン車のように増結して車両長を伸ばすのではなく12両のまま維持される。これは近年新快速が停車するようになった南草津や連続立体交差事業などにより加古川などの主要駅で12両までしか入らないため、13両に増やせなかったのだろう。
今回の新快速Aシートの設置はJR東日本のグリーン車自由席が原則基本10両編成の真ん中4、5号車に連結されているのと大違いだ。これはおそらくお手洗いの数をこれ以上増やさないためではないかと考えられ、もし新快速のうち8両編成側のど真ん中(5号車など)にAシートを連結することになれば、1号車のみならず5号車にもトイレを設置(過去の旧形式からトイレをとったことを考えれば復活、ということにもなるが)する必要がありコストがかさむためであると思われる。その中でいかに車両の真ん中寄りでお手洗いを増やさない位置に置くかを考えた際に、付属編成側の4両編成のすでにトイレ設置がある9号車に設置することにしたのではないだろうか。
1.2. 新快速Aシートの設備は特急列車以上か
またAシートは2ドアとはいえ、乗降ドア開口幅が1,300mmと新快速のその他の車両のみならず通勤電車のドア開口幅と同じとなっている。JR東日本の2階建てグリーン車自由席が片開き810mm、JR北海道の721系千歳線快速エアポートが930mm、733系千歳線快速エアポートが1,150mmであることを考えると、中央線快速に導入される2階建てグリーン車は乗降ドア開口幅が1,300mmとなる見込みではあるが、有料座席のわりに広い。
また、JR東日本の2階建てグリーン車の車端部やJR北海道千歳線快速エアポートに設置されているデッキがAシートには設置されていない。2階建ての場合デッキ扉が設置されていないが、有料座席でしかも指定席サービスが受けられない、つまり平屋のグリーン車自由席相当であることを考えると、デッキがあってもよかったのではないだろうか。
なお、座席とドアの間には簡易な仕切りは設置されており、Aシート9号車は補助座席が撤去され、46席のAシートのみの配置となる。設備を見ると、リクライニングシートとテーブル設置、全席コンセント、無料wi-fiや荷物スペースなど、長距離利用に嬉しい設備となっている。シートピッチについては記載がないが、46席ということは12列の座席が設置されると思われ、普通車自由席3ドアのドア間の座席である6列×2と列数は同じとなっている。
223系3ドア車ののドア間は5,770mm、中ドア幅が1,300mmであることから、両端のドア間は12,840mmとなる。ここに12列入るとすると、単純計算で1,070mmのシートピッチとなる。端の仕切りなどを考慮しても各席間のシートピッチは1,000mmを超える見込みで、223系自由席のシートピッチ910mmを超えるのはもちろんのこと、JR東日本のグリーン車自由席のシートピッチ970mm、JRグループの一般的な在来線特急列車の普通車のシートピッチ980mmをも上回る勢いで、場合によっては東海道・山陽・九州新幹線中間車普通車のシートピッチ1,040mmにも迫る勢いだ。これは、京阪特急プレミアムカーのシートピッチが1,020mmであることから、少なくともシートピッチを京阪プレミアムカーと同等かそれ以上にしたかったのだろう。
さすがに新幹線・在来線特急のグリーン車指定席のシートピッチ1.160mmには及ばないが、飛行機(日本航空クラスJを含む)や在来線特急普通車よりも広い空間が使えると考えると、快適な車内空間ということは言えそうだ。
ちなみに新快速Aシートは2列+2列シート、京阪プレミアムカーは2列+1列シートとなっているが、これは車体幅が京阪8000系が2,780mmに対し、新快速223系が2,980mmであることから、座席を詰めることができたものと思われる。
座席が指定されないのに500円の利用料金は、私鉄ホームライナーの相場300~400円と比べればやや値が張るが、JR東日本のホームライナーがライナー券510円であること、新快速が非常に長距離を走ることから、妥当な値段設定ではないだろうか。また料金徴収も車内で着席時のみとなっており、JR東日本のグリーン車自由席のように事前購入からの着席できない場合に返金する前金方式ではない。沿線住民の地域性もあり座れないと承知で乗客に券を買わせることをJR西日本がためらったのもあると思われるが、京阪電鉄「ライナー」や京阪特急「プレミアムシート」のように指定席にしてしまえば解決できたようにも感じる。
ただこの料金徴収法により、立席として9号車を利用するにはAシート券の購入は必要なく、10~12号車の乗客も自由に出入りでき、9号車のお手洗いも使用できるものと思われる。
…とここまで新快速新たに連結されるAシートについて快速のグリーン車自由席や普通車指定席基準で見てきたが、そもそも新快速の栄光とは何だ。新快速は、153系時代には特急「雷鳥」を新大阪で抜かし「国鉄監修 交通公社の時刻表」(現:JTB時刻表)の東海道本線の掲載ページから追い出したほか、対私鉄(特に阪急)との競合のため、普通車自由席のみながらもオールクロスシート車の117系を導入し113系のグリーン車自由席を廃止に追いやり、昼間特割きっぷで大幅に値引きして利用促進を図る一方で、特急「加越2号」を除く全ての国鉄列車の表定速度を上回る最強の列車として君臨し、国鉄大阪鉄道管理局の絶対的エースだった。
しかし近年大きく様相が変わりつつある。2016年2月より新快速向けに導入された225系1000番台は種別幕を廃止しフルカラーLEDによる種別表示となった。しかしJR東海では313系でフルカラーLEDによる国鉄書体の新快速表示をしているのにもかかわらず、225系1000番台は種別表示もゴシック体となり、斜め字の画端の鋭さが消滅してしまった。
また昼間特割きっぷは2018年9月30日で発売を終了し、ICOCAポイントにとって変わられた。
そして今回のダイヤ改正より、9号車のAシート導入車両のみ帯色は青一色となり、窓周囲は黒となっている。おいおいそれでは683系(「サンダーバード」型車両)のリニューアル塗装と同じではないか!過去の歴代の新快速の帯をも捨て、かつての競合相手特急「雷鳥」の後身に染まって何がしたいんだ新快速!Aシートの導入は新たなる新快速時代の幕開けなのか、それとも過去と決別し国鉄大阪鉄道管理局から引き継いだ新快速最強伝説を葬り去り他の快速や特別快速と混ぜるのか、新快速に対するJR西日本の姿勢が気になるところだ。
にもかかわらず、新快速に有料座席を設定したのは、それだけ設備へのニーズが高い乗客が一定数いるということなのだろう。
2. 新快速の増発はどうなる
では、今回の2019年3月JR西日本ダイヤ改正で新快速の増発は成されるのか。
新快速は2018年3月17日ダイヤ改正に土休日朝に増発を実施したが、Aシート設定により定員が減ること、今後年内にも徐々に223系を改造しAシート化するとなると、現在平日夕ラッシュ時の大阪始発を除き12両で運転される新快速の輸送力を補うには、定員減を増発で補うしかない。
ともなると、琵琶湖線直通新快速が土休日に毎時3本から毎時4本に増発される時間帯が増える可能性が高いものと思われる。
ただ、その分前回の2018年3月17日ダイヤ改正で土休日朝の湖西線からの新快速は琵琶湖線からの直通列車が増えた分だけ大阪止まりとなったほか、2本とも12両から8両に短縮されてしまった。特に敦賀始発の場合近江今津で増結するが、増結する相手が8両から4両に短縮されている。ともなると、琵琶湖線直通新快速が増える分湖西線直通新快速が12両から8両に減車され、大阪発着列車が増えていくということになるのだろう。
それでもJR京都線内では新快速が毎時4本から毎時5本に増えることになるし、JR神戸線は大阪~三ノ宮・神戸間で新快速のみならず快速も先着のため昼間毎時8本の利便性がある。そうなると、琵琶湖線直通新快速の増発に伴う湖西線直通新快速のJR神戸線直通減少による影響はほとんどないようだ。むしろ湖西線直通新快速を全て大阪発着に分離して湖西路快速的な愛称をつけてしまう可能性もないわけではないだろう。
3. 結び
今回の2019年3月JR西日本ダイヤ改正では、新快速に有料座席車Aシートを導入することになったことで、収益を高めようとしている。今後JR西日本でどのようなダイヤ改正を実施するのか、見守ってゆきたい。
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