近畿日本鉄道は2020年1月21日、プレスリリースにて2020年3月14日にダイヤ変更を行うと公表した( 2020年のダイヤ変更について )。今回はこれについて見ていく。
1. 新型車両投入でひのとり新設へ
今回の2020年3月14日近畿日本鉄道ダイヤ変更では、2018年3月17日ダイヤ変更以来約2年ぶりに近畿日本鉄道の大半の路線でダイヤ変更を行う。
今回のダイヤ変更では事前予測でもお伝えした通り今回のダイヤ変更では80000系ひのとりの投入を行う。
今回のダイヤ変更では名阪特急のうち停車駅の少ない甲特急15往復中6往復に新型車両80000系ひのとりを投入する。
なお新型車両80000系ひのとりを使用する列車は、プレミアム車両のみならずレギュラー車両でも特急料金に加え100円~200円の加算料金を徴収する。既存のアーバンライナーやアーバンライナーnextと比べても値上げすることとなる。
なお今回のダイヤ変更では所要時間を短縮し鶴橋~近鉄名古屋間を1時間59分で運転する列車を増やすこととなるが、5本中4本はアーバンライナー類の運転のまま所要時間を短縮する。特に80000系ひのとりの性能が優れているというわけではないようだ。
また今後2021年3月までに名阪甲特急15往復全てを新型車両80000系ひのとりによる運転に切り替えるとしている。
このほか、大阪線・名古屋線では特急列車で見直しを図る。名張5時41分発名古屋行き特急105号を増発しアーバンライナーで運転するほか、松阪5時36分発近鉄名古屋行き特急8514号を増発し伊勢志摩ライナーで運転する。
このほか鳥羽発着の特急のうち2本を宇治山田発着に、2本を五十鈴川発着に、1本を松阪発着に短縮する。
2. 新型車両ひのとりを阪奈特急にも投入へ
また今回の2020年3月14日近畿日本鉄道ダイヤ変更では、新型車両80000系ひのとりを阪奈特急にも投入する。
大阪難波~近鉄名古屋間運転の停車駅の少ない名阪甲特急に投入してレギュラー車両含め加算料金を徴収するのは経営戦略として正しい。ただ大阪難波~近鉄奈良間運転の阪奈特急にも80000系ひのとりを投入するとととなる。
この置き換えは21000系アーバンライナー及び21020系アーバンライナーnextの運用を持ち替えており、2020年3月14日ダイヤ変更時点では1日1往復ではあるが80000系ひのとりの投入が完了する2021年3月ダイヤ変更(時刻を変更するかまでは分からないが)までに順次置き換え、結果的に大阪難波→近鉄奈良間では17本中5本、近鉄奈良→大阪難波間では13本中4本が80000系ひのとり運用になるのだ。
もちろん車両以外変わらなければ何の問題もない。プレミアム車両のみの値上げだったとしてもほとんどの人には影響はないからまあ良しとしよう。しかし80000系ひのとりは、レギュラー車両でも加算料金を徴収するのだ。運転系統はは名阪特急でなくても構わない。つまり阪奈特急へも一部で80000系ひのとりを投入することにより、一部で100円追加徴収するということなのだ。
名阪特急で停車駅の少なさや所要時間に対する短さで料金を値上げするのは分かるのだが、奈良方面は所要時間変わらないしただのボッタクリである。東武鉄道でいうところの特急料金が割高な伊勢崎線特急「リバティりょうもう」を1日1本運転する並みに余計、で済めばいいのだが、このまま阪奈特急のアーバンライナー類を80000系ひのとりによる置き換えが続けば何のサービス向上もないのに実質的な値上げになってしまう。こんな由々しきことはない。
なおこれまで近鉄甲特急に使用していた21000系アーバンライナーや21020系アーバンライナーnextは近鉄乙特急に順次運用を移し、汎用特急型車両の運用を置き換える。これで1960年代に導入したスナックカーをやっと廃車にできそうだ。というか、特急型車両ですら50年使う近鉄は如何なものかと思うのだが…
3. 大阪線で快速急行の急行格下げ拡大へ
今回の2020年3月14日近畿日本鉄道ダイヤ改正では、平日朝ラッシュ時ピーク前で運転を見直すこととなった。
今回のダイヤ変更では快速急行3本を急行に格下げすることにより、停車駅が5つ増えることとなった。急行に格下げしたのは青山町5時36分発快速急行大阪上本町行き、青山町5時52分発快速急行大阪上本町行き、青山町6時11分発快速急行大阪上本町行きの3本で、ホーム有効長の関係で10両から6両に減車する。
なお輸送力を確保するために同時間帯に五位堂→大阪上本町間で急行を2本増発する。
今回の快速急行3本格下げと急行2本の増発を行ったことから、10両×3本を6両×5本にしただけなので、輸送力に変わりはないし運用本数も変わりはない。青山町~五位堂間では車両走行キロは減り増解結の手間が省けたが、その分運転要員を増やすことになってしまう。別にJR各社の特急みたいに6両なら車掌は1人で良いとか10両なら車掌は2人必要とかいこともなく、ただ運転本数を増やした分だけ運用行路が増えてしまう。
しかし今回増発するとしている五位堂発大坂上本町行き急行は五位堂で当駅仕立て印が付されていない。と言うかその分区間準急の当駅仕立て印が2本増えている。そう考えると、名張発普通五位堂行きが2本とも五位堂から急行大阪上本町行きに種別変更して運転するのではないだろうか。つまりこの列車の設定は事実上の区間急行の誕生である。
事実上区間急行として運転するのは平日は名張5時41分発普通五位堂行き(五位堂から急行大阪上本町行き)及び名張5時58分発普通五位堂行き(五位堂から急行大阪上本町行き)の2本、土休日は名張5時45分発普通五位堂行き(五位堂から急行大阪上本町行き)の1本で、全て名張始発の区間準急を置き換えたものとなっている。なお五位堂→大阪上本町間では通過駅の救済として五位堂始発の区間準急を設定している。
また快速急行から急行に格下げしたが、五位堂や河内国分のみならず五位堂~名張の各駅でも平日朝ラッシュ時の大阪上本町への先着列車が増えたことで、利便性が向上する見込みだ。特に急行通過駅はこれまで五位堂で快速急行に乗り換えていたものが、今回のダイヤ変更より普通五位堂行きに乗れば五位堂で急行大阪上本町行きに変わるので、乗り換えなしで大阪上本町まで先着することとなり利便性が大きく向上する。急行との停車駅の差も5駅しかないので、急行と比べてそこまで利便性が悪いとは思えない(もっとも、快速急行と比べたら10駅も停車駅が増えているのだが)。
これまで名張始発の区間準急や普通列車は五位堂で快速急行に抜かれていたため、桜井連絡JR桜井線経由奈良方面への利用には重宝していたが大阪方面への利用には向いていなかった。それを今回のダイヤ改正より五位堂から急行に種別変更することによって空気輸送を減らすことに成功した。
このほか、快速急行から急行に格下げしたことで河内国分に停車する料金不要列車が平日朝ラッシュ時ピーク前に大幅に増加し、利便性が大きく向上する。しかも鶴橋基準で急行の増発に伴う減便がないので、純粋に河内国分は今回のダイヤ変更で利便性が向上するようだ。
ところで、布施を急行通過駅にした方がいいと思うのは私だけだろうか。乗降人員は急行通過の近鉄八尾とさほど変わらないし、鶴橋や難波に出るにも準急や区間準急と停車駅が一緒だし普通列車に乗っても今里に追加停車するだけだからほとんど変わりないし、奈良線では阪神なんば線直通列車が減るわけでもないし、急行列車の混雑が緩和するため奈良方面に利用しやすくなるし、難波に行く列車は減るけどその分は大阪線に乗って鶴橋で対面乗り換えする手間はかかるけどその分布施のホームは大阪線の方が1階分改札口から近いので大きく損なうわけでもないし、大阪線でも長距離の急行の混雑が緩和する分近距離の普通に旅客が流れるので、相対的に列車キロを抑えることができる。
だって布施は昼間に毎時23本も鶴橋に行く電車が来るんだよ?要るかそんなに?
むしろ、近鉄八尾に急行が停車しないのもおかしい。大阪市内から近鉄主要駅への速達列車の運転本数は、生駒や奈良、河内松原、藤井寺は昼間でも速達列車を毎時6本用意しているのに、近鉄八尾は昼間毎時3本しか速達列車が来ない。にも関わらず近鉄八尾と利用がさほど変わらない布施は急行と区間準急合わせて毎時12本も速達列車が来るのだ。布施に停まる速達列車を準急以下の毎時6本のみにしても何の支障もないだろう、いやむしろその分近鉄八尾に急行を停めてよ。平日朝夕ラッシュ時に運転する快速急行は遠近分離にために停めなくていいし、快速急行の走る平日朝夕ラッシュ時は高安始発の準急でねばるけど、平日朝夕ラッシュ時に運転しない急行を近鉄八尾に停めたっていいじゃない。
このほか大和八木5時38分発急行大阪上本町行きの当駅仕立て印が消えている。プレスリリースによれば前回の2018年3月17日ダイヤ変更より直通化していたはずなのだが、当駅仕立の表記方法を改めたようだ。
また、大和八木5時08分発区間準急大阪上本町行き初電は大和八木5時00分発に8分繰り上がるほか、河内国分5時15分発区間準急大阪上本町行き初電を河内国分5時11分発に4分繰り上げることとなった。これにより高安で連絡する普通列車も時刻変更を行い、高安5時27分発普通大阪上本町行きを高安5時24分発に、高安5時44分発普通大阪上本町行きを高安5時40分発にそれぞれ繰り上げた。
この繰り上げにより、高安5時24分発普通大阪上本町行きは俊徳道にこれまでより3分早い5時36分に到着できるようになり、JR俊徳道5時40分発JR西日本おおさか東線普通新大阪行き初電に連絡できるようになった。これにより高安~長瀬間の各駅ではこれまでより17分遅い電車でJRおおさか東線新大阪行き一番列車に連絡できるようになるほか、河内国分~恩智の各駅では高安・俊徳道乗り換えでJRおおさか東線新大阪行き一番列車に連絡できるようになることで、新大阪到着時刻が地下鉄御堂筋線経由の6時15分及びJR大阪環状線経由の6時22分より早い6時05分に到着できるようになる。これにより河内国分~恩智の各駅から新大阪6時25分発「さくら541号」鹿児島中央行きや新大阪6時15分発「のぞみ204号」東京行きを利用できるようになり、東京到着は9時03分から8時39分に24分も繰り上がることとなった。
また下りでは平日に限り大阪上本町5時37分発急行伊勢中川行きを増発するほか、大阪上本町6時00分発急行五十鈴川行きは大阪上本町6時14分発急行大和八木行きに短縮することとなった。この急行大和八木行きは終点大和八木には大和八木始発の急行伊勢中川行き(おそらく五位堂5時22分発普通大和八木行きから種別変更)の発車9分後に到着するのだが、わざわざ分けたかったんだろうね。
4. 大阪線以外の各線でも初終電を中心に大幅見直しへ
また今回の2020年3月14日近畿日本鉄道ダイヤ改正では、大阪線以外でも初終電を中心に見直しを行う。
南大阪線・長野線では富田林5時25分発準急大阪阿部野橋行きを富田林5時20分発に5分繰り上げる。これにより大阪阿部野橋到着が5時53分着から5時48分着に繰り上がる見込みで、新大阪到着も大阪環状線経由で6時34分着から6時24分着に10分、地下鉄御堂筋線利用で新大阪6時25分着から6時15分着に10分繰り上がることにより、同日実施の2020年3月14日東海道新幹線ダイヤ改正と合わせて新大阪6時43分発臨時「のぞみ206号」東京行き(と言っても休日のみ運休)で東京に9時13分にしか到着できなかったものが、今回のダイヤ改正より新大阪6時33分発定期「のぞみ82号」東京行き(姫路6時00分発)を利用できるようになり、所要時間短縮も相まって東京に9時00分に到着できるようになる。
また伊賀鉄道では平日は上野市5時24分発伊賀神戸行き、土休日は上野市5時27分発伊賀神戸行きが初電であるが、今回のダイヤ変更で名張5時41分発近鉄名古屋行き近鉄特急を設定することにより伊賀神戸で伊賀鉄道から接続を取ることとなったため、全日において上野市5時18分発伊賀神戸行きに繰り上げた。
さらに奈良線では土休日の快速急行を一部を除き8両編成で運転することとし、阪神尼崎での増解結をなくし所要時間の短縮を図るものの、奈良線内での快速急行の運転本数は変わることはなかった。もっとも阪神が平日朝ラッシュ時に快速急行の8両化を行わないのが一番の要因なのだが。
このほか奈良線では昼間のダイヤパターンが若干変わり、上り(大阪難波方面)では昼間の阪神なんば線方面尼崎行きが区間準急毎時3本及び普通毎時3本であったが、今回のダイヤ変更より普通のみ毎時6本となり、昼間は区間準急尼崎行きが見られなくなった。なお下り(大和西大寺・近鉄奈良方面)は昼間も区間準急毎時3本の運転が残ることとなった。
そして名古屋線では白塚5時10分発普通近鉄名古屋行き初電を白塚5時06分発に繰り上げた。ただこの列車は近鉄蟹江で津新町5時30分発急行近鉄名古屋行きに抜かされること、この急行近鉄名古屋行きは塩浜でこの初電より後に発車する津新町5時14分発近鉄名古屋行きを抜かすことから、新幹線連絡には何ら影響はないようだ。
最後に生駒線では台風被害による徐行運転を解除し、最大毎時4本運転を復活することとなった。
5. 鮮魚列車廃止で鮮魚運搬車両設置へ
また今回の2020年3月14日近畿日本鉄道ダイヤ変更では、貸切列車扱いで運転している鮮魚列車を廃止する。
ただ、鮮魚運搬を廃止するのではなく、営業列車のうち1両を鮮魚運搬車両として貸切車両として運転することとなった。
鶴橋駅構内の組合事務所の時刻表は、時刻と行き先からしておそらく行商人が帰る列車をすぐ見つけられるように貼ってあるだけで、専用車でもなんでもなく全車両一般の車両での運転であるが、今回設定する鮮魚運搬車両は10両中1両貸切で運転する。なお鮮魚運搬車両は伊勢志摩お魚図鑑ラッピングを施すことにより誤乗を防止できそうだ。
この新鮮魚運搬車両は松阪~大阪上本町間を運転する。鮮魚運搬車両を連結するのは松阪6時44分発急行名張行きからの名張から快速急行大阪上本町行きとなっている。
また大阪上本町まで運んだ鮮魚運搬車両の入庫が必要なため、平日は大阪上本町8時47分発急行名張行きを8時54分発快速急行松阪行きに延長・格上げすることとなった。
これにより鮮魚列車用2680系3両編成は廃車となるのだろう。
なお、鮮魚専用列車は平日と土曜日に運転していたが、鮮魚運搬車両は平日にしか運転しない。土曜日の鮮魚運搬は一切しないということなのだろうか。
6. 結び
今回の2020年3月14日近畿日本鉄道ダイヤ改正では、新型特急車両80000系ひのとりの投入に伴い、近鉄特急で所要時間短縮を図ることとなった。
ただ、鮮魚列車の廃止や快速急行の急行格下げ、特急の鳥羽乗り入れ縮小など、車両運用数の削減や車両の走行キロ短縮など長寿命化などの費用節減を図っている。
今後近畿日本鉄道でどのようなダイヤ変更を行うのか、見守ってゆきたい。
コメント