西武鉄道は2020年1月29日、プレスリリースにて3月14日にダイヤ改正を行うと公表した( 2020年3月14日(土)ダイヤ改正を実施します )。今回はこれについて見ていく。
1. 特急車両置き換え完了で所要時間短縮へ
今回の2020年3月14日西武鉄道ダイヤ改正では、2019年3月16日西武池袋線ダイヤ改正以来約1年ぶりにダイヤ改正を行った。
今回のダイヤ改正では池袋線特急「ちちぶ」「むさし」の10000系ニューレッドアローから001系Laviewへの置き換えが完了した。
これにより所要時間短縮が図られ、池袋線特急「ちちぶ」池袋→西武秩父間の最速所要時間は1時間18分から1時間17分に1分短縮した。
2. 「S-TRAIN」停車駅増加へ
今回の2020年3月14日西武池袋線ダイヤ改正では、「S-TRAIN」の停車駅を増加する。
停車駅を増やすのは平日夜間運転の豊洲発所沢行きの列車で、小手指行きに延長した上で練馬と西所沢に追加停車させる。
所沢行きを小手指行きに延長し西所沢に停車させることまでは遠方への利用促進も図っており狭山線連絡も含め利便性向上となっているのだが、練馬に停車させるのはやや焦りすぎではないだろうか。
小竹向原~練馬間は西武鉄道の初乗りIC147円で乗ることができ、かつ西武線内分の「S-TRAIN」料金300円分も徴収することができる。確かに増収策とはいえ東京都区内かつ都営大江戸線と乗り換えられる練馬に地下鉄直通の座席指定制列車を停車させるのは如何なものか。
なおこの練馬への増停車により、豊洲→所沢間の所要時間が概ね57分から58分に延びている。
今回の「S-TRAIN」の増停車が着席率向上目的であることからすると、次の2021年3月西武鉄道ダイヤ改正では地下鉄直通対応の001系Laviewを地下鉄副都心線直通のみならず地下鉄有楽町線直通にも導入して「S-TRAIN」を特急に置き換えて値上げを図るのではないだろうか。
3. 秩父鉄道直通列車の運転短縮へ
今回の2020年3月14日西武池袋線ダイヤ改正では、秩父鉄道直通列車の池袋乗り入れを取りやめ、飯能までの乗り入れとする。
まずは下り列車(西武秩父・秩父鉄道方面)。池袋7時05分発快速急行三峰口・長瀞行きを池袋7時02分発急行飯能行きと飯能7時52分発三峰口・長瀞行きに系統分割したほか、池袋8時05分発快速急行三峰口・長瀞行きを池袋8時05分発急行飯能行きと飯能8時54分発三峰口・長瀞行きに系統分割した。
この系統分割に伴う快速急行から急行への格下げに伴い所沢→飯能間で各駅に停車することとなることから、池袋6時55分発準急飯能行きを池袋6時56分発準急小手指行きに短縮したほか、東横線菊名6時55分発西武線内各駅停車飯能行きを各駅停車小手指行きに短縮した。
なおこの快速急行から急行への格下げに伴い各駅に停車することとなった所沢→飯能間で所要時間が3~5分延びているが、一方で停車駅の変わらない池袋→所沢間では24分から22分に2分短縮している。これは従来使用していた4000系の起動加速度2.3km/h/sより最新の40000系の3.3km/h/sによる運転となることで最高速度105km/hでの運転時間が拡大し所要時間短縮を図ったものと思われる。
また上り列車(池袋方面)では三峰口15時25分発及び長瀞15時22分発急行池袋行きを三峰口15時25分発及び長瀞15時22分発飯能行きと飯能16時43分発急行池袋行きに系統分割したほか、三峰口16時25分発及び三峰口16時25分発急行池袋行きを三峰口16時25分発及び三峰口16時25分発飯能行きと飯能17時42分発急行池袋行きに系統分割した。ただ上り列車(池袋方面)についてはダイヤ改正前から飯能で快速急行地下鉄副都心線直通元町中華街行きに連絡していたので、影響は小さいだろう。
このほか土休日朝はみなとみらい線元町中華街6時46分発Fライナー快速急行飯能行きを西武線内準急小手指行きに格下げ・短縮したほか、代替として練馬で連絡していた池袋7時40分発快速飯能行きを池袋7時42分発急行飯能行きに格上げし所要時間の延長を最小限に留めている。
秩父鉄道の直通を取られた東武鉄道は西武鉄道の秩父鉄道直通車池袋乗り入れ廃止をどう思っているのだろうか。
なお秩父鉄道線内ではダイヤ改正を行っておらず、西武線直通電車の行先変更のみを行った。
ちなみに西武秩父16時28分発快速急行池袋行きは残るので、練馬通過の快速急行は存続する。地下鉄乗り入れのない急行が練馬通過であることから、どうしても快速急行の全停車は阻止したいようだ。
このほか平日・土休日昼間は池袋毎時00分発の急行飯能行きが池袋→所沢間で所要時間を22分から21分に短縮したが、待ち合わせがないにもかかわらず所沢での停車時間が2分から3分に拡大し、結局飯能までの所要時間は48分のまま変わらない。さすがに昼間の急行を起動加速度の低い4000系で運転しているはずもなく、まるで池袋→所沢間の所要時間を22分から21分55秒にたった5秒だけ短縮して見栄を張ったかのようにも見えてしまうのは気のせいだろうか。
4. 平日夜間も見直し実施へ
今回の2020年3月14日西武池袋線ダイヤ改正では、平日夜間にも見直しを行う。
今回のダイヤ改正では池袋16時12分発各駅停車所沢行きを各駅停車西武球場前行きに延長したほか、池袋16時57分発準急所沢行きを準急西武球場前行きに延長した。
また平日夜間は地下鉄有楽町線新木場21時43分発各駅停車小手指行きを有楽町線内のみ繰り上げた上新木場21時40分発各駅停車所沢行きに短縮したほか、地下鉄有楽町線新木場22時02分発西武線内準急小手指行きを地下鉄有楽町線内のみ時刻を繰り下げた上で新木場22時06分発準急飯能行きに延長した。このほかにも運用繰りの関係で練馬で連絡する地下鉄からの列車と池袋始発の列車で快速飯能行きと準急小手指行きを一部交換している。
さらに新木場20時27分発各駅停車石神井公園行きを増発し池袋21時06分発各駅停車石神井公園行きを各駅停車豊島園行きに変更したほか、新木場22時54分発西武線内準急小手指行きを増発し、新木場22時50分発各駅停車小手指行きを22時49分発各駅停車清瀬行きに短縮した。
このほか今回のダイヤ改正では初終電も変更している。初電は保谷4時29分発各駅停車池袋行きを保谷4時25分発に繰り上げ、池袋到着を4時51分から4時48分に3分繰り上げた。これにより山手線の2番列車である池袋4時52分発の電車(両回りとも)への連絡時間が1陣から4分に拡大し、利便性が向上した。
また平日に限り保谷24時13分発各駅停車池袋行き終電を石神井公園24時17分発各駅停車池袋行きに短縮した。これにより保谷及び大泉学園からの池袋への終電は1本前の飯能23時32分発準急池袋行きに2分繰り上がることとなった。
5. 地下鉄有楽町線直通列車増発へ!
今回の2020年3月14日西武鉄道ダイヤ改正では、地下鉄有楽町線直通列車を増発した。
増発したのは石神井公園~小竹向原~新木場間で毎時2本増発した。ただ西武池袋線内では乗車チャンスが余りに増えるので、下りは保谷行き、上りは小手指始発の地下鉄有楽町線直通列車昼間毎時2本を各駅停車から準急に格上げするほか、地下鉄副都心線直通快速急行を新桜台通過とする。これにより地下鉄直通列車の乗車チャンスが増えるのは、練馬と石神井公園のみということになる。
そもそも増発区間が折返しができる最短の石神井公園までだし、増発分を準急に格上げしている点で西武池袋線内はほぼ回送に近いし(といっても地下鉄直通列車が各駅停車から準急に格上げした大泉学園や保谷からすれば朗報なのかもしれないが)、別に新桜台の昼間の停車本数なんて毎時6本あれば足りるし、地下鉄副都心線直通快速急行の所要時間短縮を図りたいのであれば増発する必要もなかったと思うのだが。
そもそも地下鉄有楽町線直通列車は東京メトロ副都心線が開業した2008年6月14日ダイヤ改正までは昼間も平日夕ラッシュ時も毎時6本しかなく、しかもうち毎時2本は新線池袋(現在の副都心線池袋)発着だったため当時有楽町新線に駅設置のなかった千川や要町、及び有楽町線東池袋・新木場方面へ向かう列車は昼間毎時4本しかなく、残る毎時2本の利用は小竹向原で対面乗り換えするほかなかった。
それを地下鉄副都心線開業に伴い昼間も平日夕ラッシュ時も毎時6本から毎時8本に増やしたのはまだわかるのだが、西武有楽町線で平日夕ラッシュ時に増発しないまま昼間に増発してしまうと当然昼間の増発分は空気輸送になる。これにより昼夕輸送力比は100.0%から125.0%までに上がってしまった。
別に地下鉄有楽町線直通だけで昼間に毎時6本の直通列車を設ける必要性はないとは思うのだが、それでも増発をするのは練馬から地下鉄有楽町線への直通列車を増やすためだろう。よほど都営大江戸線から客を奪い、西武線の初乗り運賃を徴収したいのだろう。そんなに昼間に増発したいなら平日夜間もオフピークに2本だけの増発にとどまらずに18時台に平日夕ラッシュ時にも増発すればいいのに。
なおこれにより、下りでは池袋始発の各駅停車所沢行き(土休日は一部西武球場前行き)が練馬で待避を受けるのが地下鉄有楽町線から来る各駅停車保谷行きから準急保谷行きに格上げした。これにより昼間において練馬で同一方向に向かう各駅停車が各駅停車に抜かされる事態を回避することとなった。
6. 結び
今回の2020年3月14日西武鉄道ダイヤ改正では、特急「ちちぶ」「むさし」の車両置き換え完了や練馬対策による「S-TRAIN」の練馬停車化や西武有楽町線の増発など、様々な変更が加えられている。
今後西武鉄道でどのようなダイヤ改正を実施するのか、見守ってゆきたい。
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