JR西日本は5月、公式サイトにて2018年5月10日から6月30日にかけて山陽新幹線に臨時「ひかりレールスター」を運転すると公表した( 期間限定ひかりレールスター運行情報 )。今回はこれについて見ていく。
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1. 速達型「ひかりレールスター」、再度復活!
今回の2018年5月~6月山陽新幹線臨時列車運転では、臨時速達型「ひかりレールスター」が運転される。
近年運転された速達型「ひかりレールスター」と言えば昨年2017年8月より運転されている「のぞみ」潰しの「ひかりレールスター」があったが、新大阪駅20番線の空き状況の関係で岡山と姫路で「のぞみ」に抜かれるほか、2018年3月~6月の山陽新幹線臨時列車運転にて所要時間が短縮しN700系8両編成(「さくら」型車両)専用スジとなってしまった。700系8両編成「ひかりレールスター」のスジは2011年3月12日ダイヤ改正と2012年3月17日ダイヤ改正で2度にわたりN700系8両編成(「さくら」型車両)に置き換わってきたが、JR東海の対西政策に一矢報いるべく「のぞみ」潰しスジでさえN700系8両編成(「さくら」型車両)に置き換えられてしまったのだ。これでは博多発新大阪行きで途中駅通過設定があるため速達型「ひかり」にはなるが、速達型「ひかりレールスター」ではない。
そこで今回の2018年春の山陽新幹線臨時列車運転で、増発して「のぞみ」のスジを潰し、さらに途中で抜かれることのない速達型「ひかりレールスター」を設定することとなったのだ。
2. 抜かれない「ひかりレールスター」復活!
さて今回の2018年5月より運転される臨時「ひかりレールスター」のダイヤはどうなっているのか。
最大1日1往復、2本が運転されるが、運転区間から見ていくと姫路~博多間での運転となっている。なんと新大阪に乗り入れないのだ。これは、既に新大阪駅を管轄するJR東海との間で2018年3月~6月の新大阪駅での列車配置について決まってしまっており、JR西日本側では変更が利かないためであると思われるが、ある意味姫路から大阪まで最強の新快速で移動せよという風にもとれる。なお、JRおでかけネットの時刻表では姫路駅の番線表示はないが、おそらく折返しによく使われていた13番線を使用するものと思われる。
姫路~博多間を運転する今回の臨時「ひかりレールスター」の停車駅は、両方向とも岡山、広島、新下関、小倉で、かなり停車駅を絞っており、鹿児島中央発新大阪行き「さくら552号」を除き全ての定期「さくら」が停車する福山を通過する。新下関にも停車しているが、各県1停車駅設定であれば新山口にしてもいいはずで、敢えて新下関に停車させたのかというと、7月以降新大阪乗り入れが実現された場合に姫路を通過としてしまうと完全に「のぞみ」と遜色ない停車駅設定となってしまい、「ひかりレールスター」ではなくなってしまう。「ひかりレールスター」として今後もし新大阪乗り入れした場合に原則1県1停車駅かつ「のぞみ」の絶対に停車しない新下関を停車駅に選んだのであろう。
それではダイヤはどうなっているのか。下りは姫路13時14分発「ひかりレールスター577号」博多行きで、博多に15時27分に到着し、所要時間は2時間13分となっている。300km/h対応のN700系「のぞみ」であれば2時間03分程度で走破できるが、285km/hの700系「ひかりレールスター」でも10分の差で運転でき、かつ新大阪~博多間で運転された際に推定で2時間43分で運転でき、かつての定期「ひかりレールスター」の概ね2時間40分~2時間46分運転から考えると、2017年のデジタルATC導入で所要時間の改善が図られたとはいえ性能上限まで活用していると見ていいだろう。
時刻を見ていくと、姫路を13時14分に出発すると、岡山に13時35分に到着し、13時36分に出発する。この岡山発着時間は東京10時13分発臨時「のぞみ165号」博多行きと同一で、スジを潰している。また広島には14時14分に到着し14時15分に発車しており、臨時「のぞみ165号」より1分遅くなっている。その後新下関を15時01分に到着し15時02分に出発し、次の小倉は15時10分着、15時11分発、終点博多に15時27分に到着する。新下関~博多で3駅連続停車をするが、このうち小倉と博多の発着時刻が新大阪12時52分発臨時「さくら587号」鹿児島中央行きと同一であり、こちらもスジを潰している。なんと今回臨時運転される臨時「ひかりレールスター577号」は「のぞみ」潰しのみならず「さくら」潰しも行っているのだ。
また上りは博多14時18分発「ひかりレールスター576号」姫路行きで、姫路に16時30分に到着し、所要時間は2時間12分となっている。こちらも性能上限まで活用していると言えるだろう。時刻を見ていくと、博多を14時18分に出発し次の小倉を14時35分に到着し14時36分に出発する。博多駅では14時15分発定期「さくら556号」新大阪行きや博多14時19分発臨時「のぞみ178号」東京行きなど列車が密集しており、この時点で臨時「のぞみ178号」はスジが潰されているものと思われる。その後、臨時「ひかりレールスター576号」は新下関を14時44分に到着し14時45分に出発、広島に15時29分に到着し15時32分に発車する。博多→広島間では臨時「のぞみ178号」より1分早く運転しているが、上りの広島駅のみ3分停車している。そして、広島15時32分発は臨時「のぞみ178号」と同じ時刻であり、ここから完全に「のぞみ」を潰し始める。その後、岡山に16時08分に到着し、16時09分に出発するがこちらも臨時「のぞみ178号」と時刻が同じ。終点姫路に16時30分に到着する。
運転日は下り姫路13時14分発「ひかりレールスター577号」博多行きが5月10日~5月31日の木曜・土曜・日曜(但し5月17日は運休)、6月2日~6月30日の金曜~日曜(但し6月22日は運休)となっている。また博多14時18分発「ひかりレールスター576号」姫路行きは5月10日~5月31日の木曜・土曜(但し5月17日は運休)、6月2日~6月30日の土曜及び6月29日に運転される。
このように今回の臨時「ひかりレールスター」の運転では、2本とも臨時「のぞみ」のスジを潰し山陽新幹線内での運転を不可能としている。しかも以前運転された「のぞみ」潰しの「ひかりレールスター」よりも運転日が圧倒的に多く、途中で「のぞみ」に抜かれることなく、「のぞみ」のスジを博多~広島間だけでなく広島~岡山間でも潰すことにより山陽新幹線内での臨時「のぞみ」運転を不可能としているほか、上り列車の号数は全く異なる時刻にも関わらず同一の576号を用いている。先の「のぞみ」潰しの臨時「ひかりレールスター」は広島→新大阪で輸送力増強を図ることができていたが、今回運転される臨時「ひかりレールスター」は完全に「のぞみ」を潰しに来ているほか、N700系8両編成(「さくら」型車両)に乗っ取られたかつての「のぞみ」潰しの「ひかりレールスター」から号数を奪取し、下りでは臨時「さくら」のスジを潰している。今回の臨時「ひかりレールスター」の運転は、「のぞみ」と「さくら」に対する積年の恨みが爆発したのではないかと思うくらい見事に運転不可能としているのだ。
3. 今回の臨時「ひかりレールスター」の新大阪乗り入れはあるのか
今回の2018年5月~6月山陽新幹線臨時列車運転で設定された臨時「ひかりレールスター」であるが、この臨時「ひかりレールスター」は今後新大阪乗り入れはあり得るのだろうか。「のぞみ」を潰されたJR東海が承服しない可能性もあるが、今回はダイヤ面から可能かどうか検証していく。
まずは下り(博多方面)について。臨時「のぞみ165号」の時刻に合わせると新大阪12時48分頃の出発となるが、山陽新幹線では新大阪12時48分着定期「みずほ604号」があり、20番線に到着する。そのため新大阪12時52分発臨時「さくら587号」は21番線発となっている。また山陽新幹線の新大阪行きが20番線を使えない際に利用される24番線も、新大阪12時46分発臨時「のぞみ350号」東京行きが使用しており、山陽新幹線新大阪発着列車の用いるホームがなさそうだ。この臨時「のぞみ350号」はほぼ多客期しか運転されないが、被る場合には臨時「ひかりレールスター」を新大阪発とするには、新大阪12時46分発臨時「のぞみ350号」東京行きを23番線発とし新大阪12時48分着定期「みずほ604号」を24番線着としなけれればならないようだ。
また、上り(新大阪方面)では、臨時「のぞみ178号」の新大阪着時刻を参考にすると16時54分に到着するものと思われる。この時間帯は20番線は新大阪16時48分着定期「さくら556号」が使用しており、24番線も臨時「のぞみ369号」が新大阪16時56分着で設定されいる。ただ、この臨時「のそみ369号」は多客期でなければ設定されず(多くの場合は新大阪16時53分着「のぞみ287号」として27番線に到着する)、多客期を避ければ臨時「ひかりレールスター」を24番線着として設定できそうだ。
4. 結び
今回の2018年5月~6月山陽新幹線臨時列車運転では、姫路~博多間で臨時「ひかりレールスター」を最大1日1往復運転することとなった。
今回の臨時「ひかりレールスター」の設定は春の臨時列車お知らせにも追加のプレスリリースにもない電撃増発で、特設ページとスペシャルムービーまで制作しており、これまでの臨時列車運転と比べてもはるかに意気込みが強い。
今後この速達型臨時「ひかりレールスター」が継続して設定されるのか、新大阪乗り入れを実施するのか、楽しみにしたい。
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