ゆいレールを運行する沖縄都市モノレールは6月21日、プレスリリースにてにて2017年8月1日にダイヤ改正を行うと公表した( 混雑緩和のため大幅な「ダイヤ改正」を実施します )。今回はこれについて見ていく。
1. ゆいレール、全日に渡り増発
今回のダイヤ改正では、混雑緩和のため全日に渡り沖縄唯一の鉄道であるゆいレールが増発することになった。
前回7か月前に行われた2016年12月17日ダイヤ改正では土休日の2本増加にとどまったが、今回のダイヤ改正ではこれまでは平日ダイヤと土休日ダイヤの2本立てであったが、今回の2017年8月1日ダイヤ改正で平日(月曜日~木曜日)、金曜日、土曜日、休日の4ダイヤになることとなった。
土曜日ダイヤはバスではありふれているものの、鉄道では名鉄築港線と阪急今津線(宝塚~西宮北口間、登校日に限る)、能勢電鉄、JR西日本の和田岬線、ソウルメトロの一部路線およびJR線のうち一部の地方路線で休日運休列車を設定することで行っているが、2014年に広島高速交通アストラムラインが土曜日ダイヤを導入したが、あえなく1年で休日ダイヤを増便する形で統合されてしまった。土曜日専用ダイヤを設けるのは近年では珍しく、いつごろまで続くか見どころだ。
また今回のダイヤ改正ではゆいレールに金曜日ダイヤも導入される。かねてより毎週金曜日は臨時ダイヤと称して増発を行ってきたが、金曜日ダイヤとして公式に分けるのは極めて珍しい。金曜日に運行される臨時列車単位では長距離列車を中心に運行されており、東海道新幹線では「のぞみ401号」(東京17時53分発新大阪行き)、山陽新幹線では「のぞみ197号」(東京18時13分発・新大阪20時48分発原則広島行き・東京~新大阪間は「のぞみ403号」として多頻度運行・ごく稀に博多まで運転することも)などがあり、在来線では常磐線特急「ときわ96号」(勝田17時30分発上野行き)がある。在来線普通列車となるとJR東日本が埼京線で運行している金曜臨時列車を運行したり、JR東海が静岡地区の東海道線で深夜に1本快速列車を運行している程度で、12月の金曜日に各社で増発や延長運転を行う程度で他はなかなか見つからない。金曜は夜間に混みやすいというのはありそうだが、直通運転や別運用の設定などで設定する必要があることからもなかなか難しいのであろう。
また平日ダイヤを2つに分ける発想も平日休校日ダイヤとして名古屋市営地下鉄東山線や愛知高速交通Linimoで設定されているくらいで、こちらもなかなか珍しい。今回平日ダイヤから金曜日ダイヤを分けて設定できたのはゆいレールが直通運転をしていないことも関わっているのではないだろうか。
とじはいえなぜ今回4ダイヤに分けたのであろうか。おそらくゆいレールとしてはできるだけ増発はしたくなかったが、混雑緩和のために増発せざるを得なくなった。しかし年間総本数をできるだけ抑えたいために、曜日別にダイヤを組むことすることで極力増発を抑えようとしたのではないだろうか。
それでは次の章から、各4ダイヤについて見ていく。
2. 平日ダイヤは朝夕ラッシュ時増発へ
今回のダイヤ改正では全日に渡り増発しており、平日も例外ではない。平日(月曜~木曜)は朝の採最短運行間隔を5分から4分30秒に縮め、首里基準朝8時台で2本増発し、1運用増加し推定12運用となった。運転間隔が4分30秒に縮まったのはピーク時の18分間しかないようだが、5分間隔時間帯が20分から38分(4分30秒間隔時間帯含む)に拡大したことで、朝時間帯は全体的の運行間隔が縮んだようだ。
また平日夕ラッシュ時は最短7分間隔から6分間隔に縮まったことで那覇空港基準で18時台に3本増発し毎時10本運行となっているが、こちらも周囲の運行時間帯で増発が行われており、17時台に1本増発した。平日(月曜~木曜)では、結果6往復12本が増発された。これにより昼夕輸送力比(適正値60〜78%/推奨値66%~75%)は70%から60%へと下がり、推奨値から外れるものの適正値内には収まるものと考えられる。
3. 金曜日ダイヤは実質ほぼ据え置き
前回2016年12月17日のダイヤ改正記事で軽く触れたが、ゆいレールでは既に2016年12月の時点で金曜日は臨時ダイヤで運行されており、実質既に増便されていた。この毎週行われている金曜臨時ダイヤと比較していく。
まずは平日朝。朝に関してはこれまでの平日ダイヤ同様最短5分間隔での運行となっており、今回のダイヤ改正で平日(月曜~木曜)ダイヤと同様最短4分30秒間隔に縮められた。朝に関しては他の平日と遜色ないようだ。
しかしその他の時間帯では多少時刻変更はあるものの運行間隔はほぼ据え置き。というか1本8時台に移ってしまったため9時台~11時台で1往復減少してしまった。金曜日ダイヤは公式に固定化したものの、実質増発は1往復2本にとどまり、実質今回のダイヤ改正で小規模な変更となった。金曜日のみで昼夕輸送力比(適正値60〜78%/推奨値66%~75%)を見ていくと75%のままとなっており、輸送量に過不足はないようだ。
4. 土曜日ダイヤはほぼ終日8分間隔化
今回のダイヤ改正では土休日ダイヤも2つに分かれ、土曜日ダイヤと休日ダイヤに分けられることだ。これにより9時台~19時台まで8分間隔が保たれ、前回2016年12月17日のダイヤ改正では土休日に2往復4本しか増発されなかったが、17往復34本が増発することになった。
5. 休日ダイヤはごく小規模にとどまる
今回のダイヤ改正で土休日ダイヤから分離された休日ダイヤであるが、休日ダイヤも増発を行っている。朝は10分間隔から8分間隔にまで増発したことにより、8時台と9時台に2往復ずつ増発した。
また、前回のダイヤ改正で実施された土休日夕ラッシュ時の増発で、18時~19時30分までを10分間隔から9分間隔に詰め、1往復増発した。今回は9分間隔時間帯が延長し(おそらく最短8分30秒程度まで間隔が狭まっている)、15時台~18時台まで毎時7本の運行となり3往復の増発とし、休日夕ラッシュ時の増強を図った。これにより7往復14本の増発となった。
6. 増発に際し各種値上げ
終日に渡り増発となったゆいレールであるが、近年地方交通では減便・減両して運賃を据え置くか、増発して運賃を値上げするかのどちらかを迫られている。本年2017年だけでも福井鉄道と一畑電車では減便・減両し、嵐電と広島電鉄は増発をして値上げを直後に行うとしている。上毛電鉄は初電と終電の繰り上げ・繰り下げで利便性を向上したが、東武鉄道の関連会社のため値上げを免れたものと思われる。ゆいレールは過去2011年には全区間で概ね20円~30円普通乗車券を値上げし、定期券も合わせて値上げしたため、後者タイプなのだろう。
今回はダイヤ改正プレスに合わせてゆいレールは企画乗車券の発売価格の変更を公表した。内容は1日乗車券(24時間有効)が100円増しの800円に、2日乗車券(48時間有効)が200円増しの1400円に値上がりされる。那覇バスとの共同企画乗車券である那覇市内1日乗車券(当日限り有効)「バスモノパス」は1000円のまま据え置きとなる。ここまでは観光目的を主なターゲットとして値上げを踏み切っているが、今回の値上げではおとなりきっぷを40円値上げし150円とすることとなった。このおとなりきっぷは2011年の運賃値上げの際に当時隣駅間200円だったものを半額の100円としたことから始まり、2014年の消費税転嫁時に110円に値上げしていた。定期券は適用外となるが、このおとなりきっぷの値上げは、市民生活にも影響が少なからず出ることとなった。
また、沖縄県内のバス・モノレールで使用できるICカード「OKICA」で貯められるOKICAポイントの付与率が下がることとなった。これまで一般用の場合9000円以上の利用で15%が付与されていたが、8月1日のダイヤ改正以降は7%にまで下がる。しかし日曜日に利用した場合にはポイントが額にかかわらず5%追加で付与され、日曜日の利用は促進したいように思える。増発するということは収入は上がるはずなのだが、かつての回数券の代替措置のポイント制度を縮小していくのはそれだけ経営に行き詰まっているということなのだろう。他の地方交通のように普通運賃と定期券が値上げされていないだけまだマシだと考えるのが妥当なのではないだろうか。
7. 結び
今回2017年8月1日のゆいレールダイヤ改正では、全日に渡り増発が図られ、利便性が向上することは間違いなさそうだ。とはいえ1日乗車券類が値上げされ、隣駅までの運賃も40円値上げするなど厳しい面も垣間見える。
2019年春に那覇市を飛び出して浦添市のてこだ浦西まで延伸開業するが、その際に増発がなされるのか、区間運転が設定されるのか、はたまた運賃や企画乗車券が値上がりするのか、加算運賃が導入されるのか気になること限りないが、今後も注目してゆきたい。
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